カネミ油症被害者救済法施行から3年 新認定患者含め いかに救っていくか

 結成から10年を迎えたカネミ油症被害者五島市の会。8月の総会で、矢口哲雄さん(91)=同市奈留町=に代わり、旭梶山英臣さん(64)=同市玉之浦町=が新会長に就任した。被害者救済法について、旭梶山さんは「現状では限界がある。公的救済という形で国の協力がもっと必要だ」と強調する。

 救済法により健康実態調査に協力した患者に国から19万円、カネミ倉庫から5万円の計24万円が年間支給されている。同社は患者の医療費も負担。3者協議の場で、同社は経営難を理由に支援拡大を渋っている。

 「(カネミ倉庫が言う)『倒産していいのか』という主張はおかしい。だが現状ではカネミが本当につぶれれば、救済のために別の法律が必要になるのでは」と危惧する。

 そもそも3者協議の進め方にも疑問を持っている。「被害者団体からの訴えに対し、国とカネミ倉庫の双方が責任のなすり合いをしているようにしか見えない。主体性はどこにもない。さらに、議論が平行線のままなのに『では次回また』と切り上げてしまう。これでは議論が深まりようもない」

 油症患者が起こした一連の訴訟が終結後、新たに認定された患者がカネミ倉庫などに損害賠償を求めた新認定訴訟。不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅するという民法の「除斥期間」を適用し、原告の訴えは退けられた。ただ、2014年2月、二審の福岡高裁が出した判決文には次のような一文もある。

 「損害賠償請求を認めることはできないが、救済のための法律等に基づく施策の実施により、被害者の救済を図るべき」

 発生から47年が経過し、被害者は高齢化。精力的に活動できる会員は少なくなってきている。旭梶山さんは「裁判で原告敗訴が確定した新認定患者も含め、いかに救っていくかが重要。それを法律の中に盛り込んでいくべきだ」と語る。

(2015年9月6日掲載)

新会長就任が決まり、あいさつする旭梶山さん=8月1日、五島市福江総合福祉保健センター

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