エミネム『リバイバル』 こんなはずでなかった、アメリカは

エミネム『リバイバル』

 “ラップ・ゴッド”エミネムの9枚目のスタジオ・アルバムです。2000年の『ザ・マーシャル・マザーズLP』以来7枚連続での全米初登場1位を飾りました(ベスト盤を除く)。

 今年のグラミー賞のノミネートをみるとディープなラップ・アーティストが目立ちます。理由はストリーミングでの実績(民の声)がノミネーションに反映したわけで、これまで音楽業界があえて無視してきたアーティスト達が顔を出したわけです。

 ラップがアンダー・グラウンドであった時代にエミネムが既成の音楽業界に受け入れられたのは彼が白人であったことも無関係ではないでしょう。このことに対してエミネム自身心地良かったわけではなく、星条旗とふさぎこむ本人をアートワークにした本作品では、トランプ大統領を批判するなかで、自らの成功に繋がったともいえる人種差別を批判しているのです。ビヨンセとのコラボでは自身を普通の男といい、アリシア・キーズとのコラボでは、差別の無いアメリカがホームであることを願うのです。

(ユニバーサル・2500円+税)=北澤孝

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