「忖度」は今も

 しばらく世をにぎわせて、潮が引くように去る。流行語の運命だろうが、そうでない場合もたまにある。米国発で、今も廃れない「フェイク(偽の)ニュース」はその一例だろう▲けんか腰のメディア批判を号砲に新政権をしょって走りだしたトランプ大統領は、もうすぐ就任1年になる。これもフェイクの類いだ-と言いたいのかどうか。核兵器禁止条約を「全く非現実的」と断じている▲米政権が近く公表する核戦略の指針に、この非難が盛り込まれるという。気にくわなければ何くれとなく“けんか腰”でやり込めたがる大国のリーダーを見て、ふと思う。オバマ前政権ならどうだったろう、と▲「核なき世界」を唱えたが、これという成果を残せなかった前大統領ではある。在任時に核禁条約が形をなしていたならば、核政策での“出方”はいくらか違ったろうか-とイフ(もしも)は禁物と知りながら▲その条約を先導してノーベル平和賞を受けた団体の事務局長は安倍晋三首相との面会を求めたものの、かなわなかった。事情の詮索は控えるが、首相も面会を望んでいたかと言えば、間違いなく「ノー」だろう▲米政権は核禁条約をそしり、オバマ路線との決別を鮮明にする。その意向を日本は言外に酌む。昨年の流行語「忖度(そんたく)」は忘れられていないらしい。(徹)

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