【シャッター・ドア業界の18年展望】〈大手メーカー2社トップに聞く〉

三和シヤッター工業・高山盟司社長/新工場稼働間仕切り事業拡大

 2018年のシャッター・ドア業界では、2年後に迫った東京五輪に関連する工事や都市部の再開発などが一斉に立ち上がることが予想される。一方、一昨年前から主原材料である鋼材価格の上昇や、建設作業員の慢性的な不足、それに伴う工事の延期など、経営環境は依然として不透明感が強い。18年はどうなるか。大手メーカー2社のトップに今年の展望を聞いた。(伊藤 健)

――17年の回顧と今年の見通しについて。

 「中期経営計画の2年目だが、目標に比べて国内事業は出遅れていたため『巡航速度』に戻すことに注力してきた。この結果、上期はホテルやオフィス向けのドア、物流倉庫向けの重量シャッターが堅調に推移し、売上高、利益ともに過去最高を更新した。強化している『多品種化』では、買収した学校間仕切りの三和スピンドル建材も業績面に寄与した。このほか防火設備の点検制度が一昨年前から始まり、メンテナンスや補修事業も堅調に推移した」

 「しかし主原料の鋼材価格の上昇や施工における労務費の上昇、さらにはドライバー不足に伴う物流費が上昇している。足元はこの〝三重苦〟の状況だ。当業界は下期需要型であり、3月の年度末に向けて施工が集中する。引き続き、コストダウンと販売価格への転嫁を進めていく方針だが、建築コストが全般的に上昇しているため、発注の手控えや一部工事の延期などで新規受注の取り込みは予想以上に苦戦している。また都市部と地方とでは建設需要の格差が広がっており、経営環境は楽観視していない」

――鋼材価格の転嫁については。

 「三和グループの欧州(ノボフェルム)や米国(ODC)などのグローバルでみても鋼材価格は上昇しており、世界的な動きとなっている。需要先には値上げの説明をしっかりと進めるとともに、設計変更などでコストダウンの提案のほか、製造や工事、デリバリーなどの諸コストを見直して、自助努力によるコストダウンにも努めていきたい。また価格面以外では見積もりの迅速化や納期の順守もしっかりと実行していきたい」

――間仕切り事業で新たな投資は。

 「4月から三和スピンドル建材の新工場(兵庫県尼崎市)が稼働する。学校間仕切り製造に加えて、アルミパーティションとトイレブースを製造する関連会社べニックス(本社・埼玉県比企郡)の一部事業も集約し、西日本地区の中核的な製造拠点を開設する。学校施設の工事は夏休み期間などに限定されるため、西日本地区で迅速なデリバリー、包括的な供給体制を整備して、間仕切り事業の新しいステージにステップアップする方針だ」

 「スチールパーティションについては、静岡工場で製造ラインの増設、自動化を進めてきており、拡販に向けた増産体制を強化している。間仕切り事業の売上高は現在150億円程度。2020年までにシェア10%となる200億円を目指している。静岡工場への投資も今後必要となってくるだろう」

 「学校施設は防火設備の点検業務も不可欠である。間仕切りだけでなく、集約するトイレブース製品、そしてメンテナンスや補修事業など、複合的なソリューションを提案していければと考えている」

――シャッター、ドアなどの防火設備の点検制度については。

 「点検ニーズは3月末に集中する傾向がある。作業員を増やしても、点検業務が毎年ごととなる来年からはこなせない状況も想定される。ユーザーには前倒しで点検するように依頼していきたい」

文化シヤッター潮崎敏彦社長/新研究所活用、商品開発力を強化

――17年を振り返って。

 「上期では売上高は過去最高となったが、子会社化した建築金物のBXカネシンが上積みされたかたち。工事の遅れなどにより、既存事業の売上高は伸び悩んだ。また利益面では主原材料の鋼材価格の上昇があったが価格の値戻しができず、売価が下落したことも響いた」

――18年の見通しは。

 「昨年のように建築工事の遅れはないとみている。東京五輪関連の物件も本格的に立ち上がる。手持ちの受注残高は3月末で相当額を見込んでおり、売上高は堅調に推移するとみている。建築物件が一斉に集中することが予想されるので、納期対応には万全の体制で臨みたい」

――納期対応、値戻しへの施策は。

 「工場の製造よりも、現場施工の能力不足を懸念している。大きな現場では当初からの設計変更がよくあるため、現場に密着して最新情報を入手するとともに、製造、施工と連携を取りながら納期に間に合わせていきたい。製品によっては、現場での溶接作業が不要のものもあるため、施工負担を軽減する様々な提案、施策を打っていきたい」

 「値戻しについては、すでに昨年10月ごろから需要先へのアナウンスを開始しており、今年1月から少しずつ進んでいくとみている。小口現場などは、すでに5%ほどの値上げを進めている」

――昨年、環境防災研究所棟を増築した。

 「『環境(エコ)』と『防災』に特化した最新設備を導入し、従来までは外部委託や自然に任せていた試験を自社内で実施することができるようになった。新商品の技術評価、新商品の開発スピードを引き上げて、環境、防災対策に役立つ商品を市場に投入していきたい。特に近年は集中豪雨による止水ニーズが高まっている。当社はシャッター、ドアメーカーとして社会的使命があると考えており、新商品開発を加速して商品群を拡充していきたい」

――防火設備の点検制度が3年目を迎える。

 「点検業務を進める中でこれまで埋もれていた補修需要が掘り起こされている。交換や修理のニーズが出てきており、急成長事業として注力している。しかし大きな課題は、点検する作業員の不足だ。人員確保を急いでいるが未だ足りていない」

 「補修関連では、ビルのリニューアルや住宅のリフォームのロングライフ事業もこの先、潜在的な伸びが大きいとみている。既設は予定よりも補修箇所が増えることが多い。今期は82億円の売上高を見込んでいるが、中長期には100億円を目指している」

――海外事業については。

 「昨年は台湾の合弁事業を解消したが、ベトナムでの事業をより深化させていく。現地会社ユーロウインド社との協業を進めるとともに、日系だけでなく現地企業からの受注を捕捉して収益を拡大していきたい。当社はインドネシアにも拠点があり、今後はベトナムから東南アジア諸国への輸出なども視野に入れている。海外事業は今期12億3千万円の売上高を見込んでいるが、将来的には100億円まで伸ばしていきたい」

© 株式会社鉄鋼新聞社