【トップインタビュー 古河電工・小林敬一社長】20年度営業益目標を上方修正 車載部品・放熱部材を拡販

――まずは足元の状況から。

 「昨年4月の社長就任以来、創業者である古河市兵衛氏の従業員と顧客、新技術を大切にする哲学を通じ、全社員に当社は社会に役立つために作られた企業という原点を再認識してもらう活動に力を入れている。徐々に共感が広がっており、チームとしてのポリシーが浸透してきた」

 「業績面では光ファイバの需要増やワイヤハーネスの採用拡大に加え、銅条・銅箔などでの製品構成改善で上期は全事業が増収増益した。下期は北米向け光ファイバの減少や半導体製造用テープの競争激化が見込まれるが、自動車部品・電池事業が引き続き好調の見通し。売上高の通期予想は上方修正している」

――電線関連ではどのような事業戦略を。

古河電工・小林社長

 「高圧電力ケーブルは供給体制を盤石化し、日本を含めたアジア圏で超高圧海底ケーブルのメーンプレイヤーを目指す。そのために長期的視点で製造設備の更新・増強などモノづくり力の強化や、施工に関する人員増など工事能力の向上を図っている。社会に役立つことが我々の社是なので、電力インフラの分野で存在感を発揮し利益を出すことは重要。そのための技術開発にも取り組んでいる。建設関連の分野では東京五輪に向けた電線地中化が期待材料。地中配電ケーブルや接続部材、管路材などの受注拡大を目指したい。また商慣習の改善にもしっかり取り組む」

――自動車向けで注力する市場・製品群は。

 「ワイヤハーネスは成長する中国や東南アジア、北米の市場で価値が認められる所に納めていく。中期的な需要拡大が見込まれるアルミハーネスは、現在インドネシアで母材を製造しベトナムで電線に加工しているが、今後は東南アジア以外での展開も考える。自社製電線に拘らず現地メーカーとの協業も選択肢に入れる。低コストで防水し接点の信頼性を保てるα端子とセットで広げたい。ハーネス以外の車載部品は環境対応や自動運転などの領域を新技術で攻める。ハーネスとその他車載部品の売上比率は現在2対1だが2025年度に半々にしたい」

――銅条や巻線など電子関連の材料も好調です。

 「銅条は非常に良い状況。数量増と製品構成改善の両面で効果が出ている。製品構成は日光事業所が14年の雪害から復旧する際に市場への理解を深め、耐熱性が世界最高峰の無酸素銅条を開発するなどして、より良い物となった。銅条・高機能材事業部門の販売量は現在、月間約3500トンだが、20年度には高付加価値品比率を高めながら月間4千トンに拡大する」

 「巻線は高付加価値なハイブリッド車用の平角線や、電子部品に使う極細のリボン線などに経営資源を集中し収益力を高められた。銅条・巻線の両事業とも競争力ある製品で創出した利益で研究開発を進め、市場を先取りする次世代製品を投入する流れができてきた。攻めに転ずる中で士気が高まり、現場の一人ひとりの顔つきも変わったと感じている」

――収益をけん引する情報通信事業についてはいかがですか。

 「光ファイバ需要は米州やインドで堅調に伸び、中国の成長も維持されて引き続き順調と見ている。その中で米国の大手ユーザーと長期納入契約を締結したことや、当社の存在価値を発揮できる次世代移動通信システムの導入も今後のプラス材料。欧米の事業拠点で工場を増設し19年度までに光ファイバの供給能力を倍増させる予定だが、その計画は全く揺るがない」

――事業全体が好調な中で中期計画の上方修正は。

 「20年度目標の営業利益400億円以上は17年度で達成する見通しなので、500億円まで引き上げたい。今後はIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)など新技術への取り組みを強化し、自動車と電力・情報通信などのインフラが融合する新たな時代に備える。収益は自動車や情報通信関連の分野に加え、放熱に関する材料で伸びが見込める。自動車ではアルミハーネスと車載レーダー、バッテリー状態検知センサに期待しているほか銅条の拡販も望める。放熱部材はパワー半導体やデータセンター、スマートフォンなどで需要があり、当社の多彩なヒートパイプの技術が生かせるだろう」(古瀬 唯)

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