貴重な文化財を守れ 日向で合同放水訓練 伊勢原市

大改修前の2010年に宝城坊・日向薬師で行われた合同放水

 「文化財防火デー」を目前に控えた1月21日(日)、宝城坊・日向薬師(内藤京介住職/市内日向)で合同放水訓練が実施される。当日は消防署・団による放水をはじめ、文化財を守るために所蔵品の搬出訓練なども行われる。

 1949年1月26日、現存する世界最古の木造建造物となる法隆寺の金堂が炎上し、内部の壁画が焼損。これをきっかけに、1955年にこの日が「文化財防火デー」に定められた。

 伊勢原市では毎年、防火デー直前の日曜日に、重要文化財を所有する神社仏閣などで消防署・消防団による合同防災訓練を実施。歴史を伝える大切な文化財を火災から守り、後世へと伝えていけるように、関係者が集まり訓練を行っている。 宝城坊・日向薬師で放水訓練が行われるのは2016年以来2年ぶりとなる。当日は伊勢原市消防署・消防団第3分団、日向薬師関係者など30人ほどが参加して午前9時半から訓練開始される。初期消火訓練、文化財の確認・搬出訓練などを経て10時頃から合同放水が行われる予定。

多くの文化財を擁する日向

 現在、伊勢原市内の指定重要文化財は国12件・県14件・市37件の63件。国・市登録文化財13件と合わせて計76件(無形文化財含む)となる。県内でも比較的多く文化財が指定されており、そのうち270年ぶりとなる平成の大修理を一昨年11月に終えた宝城坊「本堂」など、国指定文化財10件を含む21件が日向地区に集中している。

 市教育総務課文化財係によると、1950年の文化財保護法の制定から、1963年の市文化財保護条例を経て現在まで、市内の文化財に火災などによる被害は無い。しかしながら、宝城坊・日向薬師では法制定前の1894年に庫裏火災があり貴重な記録類が焼失。また、1923年の関東大震災による山津波でも大山周辺の文化財が流されて消失しているという。

 訓練を担当する市消防本部予防課長の山口剛消防司令長は「文化財は消失してしまえば2度と戻らない貴重なもの。子どもたちをはじめ、後世に残していけるように訓練していきたい。また、この機会に家庭内でも防火について考えてほしい」と話した。

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