高値の冬

 夜ごと食べても飽きないことから「常夜(じょうや)鍋」と呼ぶという。料理がお得意だった脚本家の向田邦子さんがよく編集者に振る舞ったと伝わる。と言っても、中身は絶対にこれ、と決まったものでもないらしい▲豚肉にホウレンソウだけの場合もあれば、野菜はレタス、キャベツ、白菜、小松菜などでも良しとされる。きのうは一年で最も寒さの厳しい「大寒」だったが、なるほど、この厳寒の折には毎晩でもいいのかも▲と、あったかい湯気の立つ鍋を思い描いた後で、いやいや、今はそうもいかない-と思い直す。レタスや白菜といった葉物を中心に、とんでもない高値が続いている。厳冬の今こそが旬の野菜もあるというのに▲昨秋、全国の産地が台風や長雨に見舞われた。県内産も11~12月の冷え込みで発育が遅れている。例年だと先に北海道産や東北産が出回り、次に九州産に移る-というのだが、今年はどこも生育がよろしくない▲昨年の同じ時期と比べ、レタスも白菜も大根も3倍超に及ぶともされ、スーパーでは目を丸くするばかりで手が伸びにくい。小売店では半分や4分の1に小分けして売ったりと、工夫して客足を引き留めている▲消費者も鍋の中身を替えるとか、知恵の絞りどころだろう。鍋の季節の去らぬうちに-と価格が落ち着くよう“祈願”する。(徹)

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