道祖神祭り「継続」 前川の輪つなぐ人形山車 小田原市

国道を走行した西地区の人形山車。テーマは『酔いどれ小籘次』

 道路脇や集落の境に佇む道祖神。「サイノカミ」「セーノカミ」とも呼ばれ、外からの悪霊などを防いでくれる神として知られる。そんな”道の神様”を、2回に渡ってレポート。今週は、道祖神祭りについて迫った。

 小正月の前日にあたる1月14日を中心に実施される道祖神祭り。代表格の『どんど焼き』のほかに、市内前川では『人形山車』が年明けの風物詩となっている。

 毎年デザインが変わる人形山車。今年も1月12日と13日の2日間、3台の新作が前川の夜を彩った。西地区の『酔いどれ小籘次』に中宿地区の『木下藤吉郎』、大河ドラマを題材にした向原地区の『悲運な女城主』。トラックの荷台に舞台を載せた西の人形山車は、毎日新聞の販売所をスタートして、国道1号線を平塚方面へ。500mほどの距離をゆっくりと往復する山車を一目見ようと、住民たちが続々と沿道に顔を出した。

 市内でも珍しい人形山車だが、5歳の息子と足を運んだ大曽根知子さん(43)は「小さい頃から当たり前のように見てきた」と話す。子どもたちが演奏する小田原ばやしの『太鼓山車』が通過すると、「私も昔叩いたんです。子どもが小学生になって叩く姿が楽しみ」と愛息子に視線を向けた。

 70年続く前川の伝統行事も、継続の危機に陥っていた。舞台の人形を毎年発注していた都内の人形店が、昨年廃業。今回の人形確保すら危ぶまれていたが、実行委員の山口勝代表(73)らが昨年2月に頼み込んだ。少子化、舞台制作の後継者不足、さらに追い打ちをかける人形屋の廃業。「やめ時だったのかもしれないけれど、先輩たちがつないできた行事なので、なんとか継続したかった」(山口代表)。来年を見据え、人形も一部譲ってもらえるよう依頼した。

 今年の打ち上げで、関係者たちが「継続」と口を揃えた前川の道祖神祭り。無病息災だけでなく、「地域の団結、輪をつなげていくためになくてはならいないもの」と山口代表は笑顔を見せた。

中宿の『木下藤吉郎』
向原の『悲運な女城主』

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