金属行人(1月22日付)

 十年一昔と言われるが、2008年のリーマン・ショックの記憶は鮮明だろう。世界的な金融危機の中、鋼材市況も急騰の後に急落。過去の市況推移をグラフ化すると際立った山で〝異常さ〟がよく分かる▼今となれば08年は異常だが、当時の年頭記事には既視感を覚える発言が散見される。小棒共同販売会社、関東棒鋼(08年3月末に解散)の賀詞交換会では鉄スクラップ急騰を受けて新年を「ステージが変わる年」と表現。合金鉄などの価格上昇で電炉からは「コスト高は海外発。不退転の覚悟で販売価格を引き上げる」との声が上がっていた▼08年初の鉄スクラップ価格は東京製鉄宇都宮工場(特級)で4万2千円。18年は同3万6千円でスタートし、すでに1500円上がっている。H形鋼の収益が堅調なため「まだ上げ余地がある」(ヤード業者)との見方は多く、4万円台も視野に入る。その一方、歴史的な高値に市中では警戒感も強まっている▼「4万円の鉄スクラップは高過ぎる」との感覚には08年の実体験が生かされていよう。電炉の主力品種である異形棒鋼の販価引き上げが進まない限り、いずれ鉄スクラップ価格は適正水準に修正されるとの指摘もある。相場の見極めには冷静さが大切だ。

© 株式会社鉄鋼新聞社