農業、介護、防災、自然… 関心高め課題解決へ 小田原

 神奈川県小田原市は今春から、人口減などで不足し始めている、地域の課題を解決する人材の発掘・育成に本腰を入れる。市内で活動する市民団体と協力し、地域コミュニティーや農業、介護など、市民が自分の関心のあるテーマを選んで学ぶことができる講座を用意。身に付けた知識や技術を実践する場も設け、将来の担い手へとつなげたい考えだ。

 社会貢献したいが、何をしていいか分からない−。2018年度から本格実施する「まちづくり担い手育成事業」は、そんな市民を対象にしている。小田原の魅力や課題、地域での取り組みを紹介し、市民に一人でも多く担い手になってもらうのが狙いだ。

 実際に今月15日に開かれたキックオフミーティングでは、事業に参加する19の個人や団体の代表者らから人材不足を心配する声が上がった。「育成講座になかなか人が集まらない」「高齢化で体も動かなくなり、役員を辞める人も多くなってきた」といった、それぞれが抱える悩みとともに、今回の取り組みへの目的意識を共有した。

 事業では、市民が参加するきっかけを提供するため、市は地域コミュニティーや農業、自然環境、介護、防災など想定する10の分野で、入門編にあたる「(仮称)おだわら学講座」を開く。魅力や課題を広く教える講座を入り口に、関心のあるテーマについてより専門的に学ぶことができる、市や団体主催の養成講座に進んでもらう。講師は団体の代表者らが務め、座学だけでなく、団体が活動する場所での実践なども検討している。

 同時に、団体が対象の「(仮称)人づくり課題解決ゼミ」も実施。担い手不足や人材育成に悩む団体に対し、専門家らが解消のためのこつを伝授。市民の受け皿となる団体の運営も側面支援する。ことし4月から各分野で取り組みを始め、7月ごろから市民向けの講座や団体向けのゼミを開きたい考えだ。

 冒頭にあいさつした加藤憲一市長は米沢藩主・上杉鷹山が創設した藩校「興譲館」を引き合いに、「小田原で行われているさまざまな活動に即した形で市民が学び合い、地域の課題解決につながるような、学びや人材育成のサイクルを構築したい」と事業の意図を説明した。

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