【現地ルポ】〈F&Cホールディングス・プレート加工販売拠点「フジマキ・スチール・インドネシア」〉短納期武器に数量拡大 国内外材、幅広く取り扱い

 【カラワン発=佐野雄紀】特殊鋼、非鉄金属の特殊プレート製造、販売を手掛けるF&Cホールディングス(本社・名古屋市中区、社長・藤巻秀平氏)が東南アジアでの需要捕捉を狙い13年、タイに続く拠点として設立した「フジマキ・スチール・インドネシア」。自動車をはじめとする工業化が進む一方、プレート需要が未知数という中での船出だったものの、14年の稼働開始以来徐々に販売実績を伸ばしている。一貫加工体制、独自性、即納を強みにさらなる業容拡大を目指す同社の今をルポする。

 フジマキ・スチール・インドネシアはジャカルタ近郊、KIM工業団地内に約2千平方メートルの工場棟、約300平方メートルの事務所棟を構える。篠原巧氏が代表を務め、40人体制で自社商品「FFプレート」の製造販売を手掛けている。

 母材は日立金属の金型用鋼SLD、SLD―MAGIC、SGT、HMD5、YXM1などをラインアップ。また全量インドネシア産のSS400、台湾から輸入するS50Cも置き、タイやヨーロッパなど各国メーカーの製品を揃える。最近ではパーツ、設備向けの販路を確保したことから、純銅製品の切断販売にも乗り出した。

 多品種の徹底した管理に向け、切断後の製品には鋼種に応じた色を塗布する。保管棚も色分けしてミスを防ぐほか、残材も同様に選別。毎月棚卸しを実施して歩留まり向上に努めている。

 加工設備はフライス盤が縦、横型がそれぞれ4台、バンドソーが3台、溶断機1台。六面フライスで10×10×10ミリから350×2千×3千ミリ、上下二面フライスが幅2千×長さ4千ミリと幅広いサイズに対応する中、400角サイズの小物~中物品のニーズが旺盛だという。

 現場では5S、現地での「5R」を掲げ、日本での加工ノウハウを移植して高精度、品質保証体制実現への取り組みを進める。国教や文化の違いを考慮し「すべてを横展開するのではなく、挨拶といった藤巻流の考え方を浸透させてグループの一体感を醸成したい」(藤巻社長)考えだ。

 配送面では現在自社トラックを4台保有し、カラワン近郊からジャカルタ、タンゲランなど広範な地域をカバーしジャストインタイムでの供給に努めている。しかし、慢性的な渋滞により日当たりの配送能力が自ずと限られるほか、エリアを広げることも容易ではない。今後事業を進める中で、いかに即納、販路拡大を両立させるかがカギとなりそう。

 特定の需要家を持たないゼロからのスタートだったが、現在では300社を超える企業と取引関係を結ぶ。日系も多く見られる一方、65%が地場ユーザーであり地道な営業活動を展開したことがうかがえる。

 競合先となる同国ローカルのプレート加工会社も5社程度ある。これまで地場企業から黒皮で手当てする需要家が多く、プレートへの切り替えが進んだという背景もあるものの、F&Cグループの強みである徹底した短納期対応が功を奏して徐々にシェアを広げている格好だ。

 ただ、高い売上高比率を占める日系ユーザーは親会社から材料支給を受けるケースがある上、近年進出のペースが鈍化。輸入などのルールが頻繁に変わるカントリーリスクも進出を妨げる要因となっており、「事業が軌道に乗るには時間を要する可能性がある」(同)と見る。

 日々激しい渋滞が発生することから、配送と同様に営業活動にも移動の制約がある中、現地スタッフ5人も営業を担当して需要深耕に注力。日系、非日系ユーザー双方へFFプレートの採用を働きかける方針だ。

 現地需要の伸び悩みに加え、運送コストの上昇、離職率など越えるべき障害は少なくない。しかし中長期的な工業化とプレート需要伸長が有力視される中、フジマキ・スチール・インドネシアは日本で培ったノウハウ、競争力を武器に段階的な成長を遂げるだろう。

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