金属行人(1月24日付)

 今年の年頭所感もそうだが、企業のトップメッセージが創業の精神や社是に言及することがある。古い歴史を持つ企業なら創業当時と外部環境や既存事業のありようは大きく異なるし、事業多角化やM&Aを経て多様な企業体に変貌を遂げている場合もあるが、抜本的な業種転換でもしていない限り、創業の精神や社是は今も息づいているようだ▼先日ある経営者から「事故や不正など好ましくないことが起きたときに原因の分析を行い再発防止の手を打つことは必須だが、それだけでは足りないのではないか」と指摘されて、確かにそうだとうなずいた▼創業の精神や自社の歴史に裏打ちされた企業理念に立ち返り、原理原則を確かめ合うこと。自社が何のため創業され何のため存在し、何を強みにしているのか。原理原則に照らして、今何が足りていて何が足りないのか。そこに働く自分たちは何を考え、何をなすべきなのか。冷静かつ烈々とした歴史観と現状認識があればこそ、現象の把握や原因の分析は有効になされ、再発防止策は確かな成長につながる▼何も特例の事案への対応策に限らない。事業のアイデア一つ取ってみても、対症療法にとどまるか否かは将来を分ける要素の一つになるに違いない。

© 株式会社鉄鋼新聞社