【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(15)】〈中山製鋼所〉5期連続の黒字達成へ 「100年企業」へ確かな手応え

 中山製鋼所は来年9月に「創業100周年」を迎える。「次期中期スタートの年が100周年の年。そこに向けてグループ全体の底上げを図り、これまで控えてきた戦略的な設備投資も実施して、より強い中山製鋼所を構築していく」と、昨年6月に就任した箱守一昭社長は力強く語る。

 業績も堅調だ。今年度上期連結決算は売上高705億円、経常利益33億円と増収増益。主力の熱延コイル、縞板、棒鋼・線材などの販売が好調だ。

 今18年3月期予想は売上高1440億円、経常利益56億円と、前期比4億円の減益予想だが、5期連続の経常黒字を確保する見通しだ。

 同社の生産・販売量は年間132万トン(16年度)。縞板や熱延コイル母材のスラブは自社電炉で約45%を賄い、残りは外部購入。棒鋼・線材用ビレットも全量外部購入している。

 縞板、熱延鋼板などの販売では「中山らしい、きめ細かい営業」(箱守社長)で、流通や需要家に根強い人気がある。棒鋼・線材も建産機部品向けなどに販路を広げている。輸出にも力を入れており、「東南アジアなどに一定量を継続して輸出したい」と箱守社長。

 グループ会社の強さも中山製鋼所を支えている。全国10カ所に工場と営業拠点を配して即納体制を敷く軽量形鋼大手の中山三星建材(本社・大阪府堺市、社長・辻村光夫氏)や、全国5拠点の中山通商、同24拠点できめ細かな販売が得意の三星商事。グループの物流を一手に担う三星海運、縞板専業の三泉シャー、不動産業務をサポートする中山興産の6子会社が「グループ収益最大化」を目標に「協働体制」を強めている。

 「素材および加工品の生産と、商社・物流を一気通貫で対応できる当社グループの強みをさらに発揮していく」と箱守社長。

 同社は10年3月期に100億円の経常赤字を計上して、経営危機に陥った。コークス工場、NSR工場、厚板工場などを休止し、合計約420人の人員削減を実施。13年3月に地域経済活性化支援機構の支援による事業再生計画がスタート。銀行債務908億円のうち602億円の債権放棄や、90億円の増資を新日鉄住金など6社が引き受けたことなどを背景に、16年3月末に完了。

 同4月から(1)中山らしさを生かした事業展開・営業推進で収益力強化(2)グループ会社協働によるグループ収益最大化(3)新日鉄住金との連携強化(4)人材育成・現場力強化―などを骨子とした中期経営計画をスタート。今年4月から最終年度。

 「当社グループは、生産現場も営業も『地道にまじめに』が持ち味。全社一丸で経営危機を乗り越え、新たな中山製鋼所として歩き出した。19年4月からの次期中期では、次代に向けて成長戦略を描いていける設備投資を進めて、グループ全員で『持ち味』を生かしながら発展させて新たな基盤づくりを進めたい」と箱守社長は決意を見せている。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=大阪市大正区船町

 ▽資本金=200億円(新日鉄住金17%)

 ▽社長=箱守一昭氏

 ▽売上高=1240億円(17年3月期連結。単独は863億円)

 ▽主力事業=熱延コイル、縞鋼板、棒鋼・線材

 ▽従業員数=478人(単独、17年9月末)

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