構造物管理業務へのドローン活用セミナーを日立システムズが開催 株式会社日立システムズ(本社:東京都、代表取締役社長:北野 昌宏)は、「ドローン運用統合管理サービス」に構造物を対象とした劣化箇所管理機能を追加し、効果的な3次元台帳の活用方法などを紹介するセミナーを開催した。当初は40名の募集に対して、倍以上の応募があり会場は熱気に包まれていた。

ドローンビジネスの現況と3次元台帳管理への期待

 セミナーの冒頭では、一般社団法人セキュアドローン協議会の春原久徳会長が登壇し、ドローンビジネスの現況と3次元台帳管理への期待について講演した。春原氏は、初めてドローン関連の事業に取り組もうと検討している来場者に向けて、ドローンの基礎的な知識や仕組みについて解説した。そして、ドローンビジネスにおいては、「ドローン × IoT」が重要だと話し、米国での事例を元に精密農業やインフラ点検の分野で、産業用ドローンが活用されている状況を紹介した。また、日本においてはインプレス総合研究所の調査資料を元に、2022年度にはドローン関連のサービス市場が2016年度の約9倍(1,406億円)に成長するとの予測を示した。そして、国内のドローン産業の取り組みについて紹介した後に、3次元台帳管理への期待を語った。春原氏によれば「ドローンによる写真合成により、3次元データの生成が可能になりました。しかし、取得した検査データの場所の特定が難しく、最終的な構造物の管理レポートの提出に時間がかかっています。また、過去の検査データとの比較も困難です。こうした課題を『3次元管理台帳サービス』は解決します」と評した。

一般社団法人セキュアドローン協議会の春原久徳会長。

日立システムズのドローン事業への取り組み

 続いて、株式会社日立システムズのドローン・ロボティクス 事業推進プロジェクトの曽谷英司本部主管が登壇し、同社のドローン事業への取り組みについて講演した。 同社では、ロボットやドローンの導入を検討している一般企業や、ロボットメーカーなどに、企画から運用までをトータルでサポートするロボィックスサポートサービスソリューションを展開している。その取り組みの一環として、2016年9月に産業用ドローンを対象とした「ドローン運用統合管理サービス」の販売を開始した。同サービスは、ドローンの操縦から空撮の代行に、画像加工やデータ保管、そしてシステム連携までをワンストップで提供する。使用するドローンやカメラも、検査対象の設備や環境に合わせて、最適な組み合わせを提案する。曽谷氏は「ドローン運用統合管理サービスでは、日立品質の厳しい安全管理による飛行から、膨大な写真データを高速で加工し転送する高度なIT技術に、セキュアな環境でデータを一元的に管理するクラウドサービスという3つの特長を提供しています」と話す。

使用するドローンやカメラも、検査対象の設備や環境に合わせて、最適な組み合わせを提案する。

 セミナーの後半では、インフラや施設などの老朽化という2030年問題を例に、ドローンによる構造物の点検から報告書の作成までを自動化するソリューションが解決策になると提唱された。「例えば、基地局点検作業でドローンを活用すると、数万箇所の基地局の効率的な点検が可能になります。また、電波の接続状況や通信速度の確認の効率化や、安定した画像記録とリアルタイム配信により、現地や事務所でも情報を共有できます」と曽谷氏は説明する。また、i-Constructionにおいても、日立グループとして測量から設計に施工、そして検査までをワンストップで提案できる体制を整えているという。さらに将来的には「ドローンがAIと連携し、新たなITサービスを展開します。例えば、設備管理システムにAIを組み合わせることで、老朽化予測などが実現します」と曽谷氏は構想を語った。

日立システムズのドローン・ロボティクス 事業推進プロジェクトの曽谷英司本部主管。

効果的な3次元管理台帳の活用方法

3次元管理台帳サービス

 セミナーの最後は、デモンストレーションも交えて「ドローン運用統合管理サービス」に新たに追加された3次元管理台帳サービスの機能や特長が紹介された。2018年3月からサービスの開始を予定している3次元管理台帳サービスは、ドローンで空撮した画像から作成された3Dモデルと撮影写真をマッピングさせて管理するソリューション。右側に表示される写真画像から、クラックなどの気になる箇所がある画像を選択すると、それが3Dモデル化された構造物のどこに該当するかを確認できる。空撮データの3Dモデル化と管理台帳へのマッピングは、すべて「ドローン運用統合管理サービス」のクラウド側で処理するので、現場の担当者や施設を管理するスタッフは、画像加工やデータ管理などの煩雑な作業は不要になる。実際の運用では、ドローンで構造物や対象の施設を空撮し、画像データを「ドローン運用統合管理サービス」にアップロードするだけで、確認に必要な3Dモデルと画像の閲覧が可能になる。
 セミナーの終了後は、個別の相談会が設けられ「ドローン運用統合管理サービス」と「3次元管理台帳サービス」の導入を検討している来場者が、登壇者たちに熱心な質問を寄せていた。

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