【現地ルポ】〈名古屋特殊鋼のインドネシア拠点「PT.Meitoku-WadayamaIndonesia」〉各種金型を一貫生産 補修溶接の引き合い旺盛

 【カラワン発=佐野雄紀】特殊鋼・金型加工などを手掛ける中部地区流通、名古屋特殊鋼(本社・愛知県犬山市、社長・鷲野敦司氏)が、和田山精機(本社・兵庫県朝来市)と共同出資し、インドネシアに設立した金型一貫製作会社「PT. Meitoku-Wadayama Indonesia」は、稼働開始から丸5年を迎えた。鍛造金型やプレス金型加工に強みを持つ名古屋特殊鋼、フォーマー向け金型を得意とする和田山精機両社が持つノウハウを結集。自動車関連向けをメーンに各種金型の現地需要を開拓する同社の今を追った。

 PT. Meitoku-Wadayama Indonesiaは2012年3月、自動車メーカーの東南アジア進出が本格化に伴う金型の現地調達需要の高まりに合わせて設立された。ジャカルタから東へ約60キロメートルにあるカラワン地区、KIM工業団地に約2200平方メートルの工場建屋をレンタルし、同年末から操業を始めた。田中正男氏が社長を務め、従業員数は49人(17年12月時点)。

 熱間、冷間工具鋼を中心にストックし鋳物から超硬材まで、すべての型製品に対応するほかギアの検査冶具など治工具も製作する。日系ユーザーは型材のほぼ全量を日本の工具鋼メーカーを指定し90%以上を占める。

 加工サイズは丸もので直径580ミリ×長さ1千ミリまで、角物は幅2千ミリ×奥行4千ミリ×高さ1650ミリまでと幅広く、日系自動車メーカー向けボディ用金型の引き合いも多く寄せられる。

 同社は材料販売のライセンスを有していないため、日本から定尺を取り寄せた上で最終製品までワンストップで加工しデリバリーする。マシニングセンタ(MC)やフライスなどの加工機をはじめとする全37台の機械設備を備え、母材切断から機械加工、検査を一貫して行う。

 このうち長物加工ニーズの増加を受けて14年夏に導入した三次元加工に対応する門型MCは、名古屋特殊鋼本社工場のものと同型機だ。繁忙時などに生産応援ができるよう互換性を持たせる。なお土が膨張するインドネシアの事情に合わせ、同機設置時には8メートルの基礎を打った。

 同国最大となる4500トン鍛造プレス用ダイセットの修理を請け負うこともあることから、門型MC近くには15トン、7・5トンの親子クレーンを設置。総重量20トンにも上る大型製品のメンテナンスも手掛ける。

 現地日系ユーザーの多くは基礎型を自社加工する一方、破損時などに使用する二番型の製作を外部業者に依頼することが多い。同社はデジタイザー(ATOS)を保有し、リバースエンジニアリング技術を武器に需要を捕捉。実績を拡大している。

 タイに拠点を置く企業による二番型製作の問い合わせも非常に多く、同社は今後もこうしたニーズの取り込みを積極化したい方針だ。

 金型製作、メンテだけでなく、昨年から日本国内で本格始動した金型の補修溶接事業にも乗り出した。金型の長寿命化やコスト削減、リードタイム短縮といったサービス強化を狙って同社にも展開。「受注残を抱えている状況」(同社)と、メンテナンス体制が不十分な現地で旺盛な需要があるという。

 パナソニック製の設備を3台設置しティグ、マグ、アーク方式で肉盛溶接した上で接合面を平坦にメンテするこのサービスは、キャビティやダイセットなど大型製品の依頼が多い。現地訪問時にも3千トンクラスのプレス型に生じた1メートル超にわたる割れの補修作業に取り掛かっていた。

 ミクロン単位の高精度加工を武器として着実に実績、知名度を上げるPT. Meitoku-Wadayama Indonesia。しかし自動車市場の拡大が確実視される中、基礎型を含めたさらなる需要捕捉に向けた取り組みも加速する。

 年末に開催され、15万人以上を集める総合機械見本市「マニュファクチャリング・インドネシア」に13年から毎年参加、日本人向けの地元新聞に広告も掲載してPR活動を行う。加工機能を強化し技術に磨きをかけるとともに、営業活動も積極展開して段階的な業績拡大につなげたい考えだ。

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