物材研が新マグネ合金、室温で高速変形可能 アルミに匹敵する変形特性

 物質・材料研究機構(NIMS)は24日、高速で圧縮しても壊れずに変形するマグネシウム(Mg)合金を開発したと発表した。超微量のビスマスを添加した合金で、破壊に対する吸収エネルギーは市販のMg合金(Mg―3Al―1Zn)の5・6倍以上優れ、市販のアルミ合金(Al―Mg系、Al―Mg―Si系)に匹敵する。

 試験速度に関係なく、変形しやすく、破壊に対して優れた吸収エネルギー特性を持つMg合金が確認されたのは世界初。室温でも高速変形が可能で、プレス加工など二次加工でも加工温度の低温化や加工装置にかかるコスト低減などが期待できる。自動車や車いす、鉄道車両の座席などでの用途拡大が期待される。

 マグネシウムは、実用金属材料の中で最も軽いという特性を持つが、室温で大きな力を加えると瞬時に壊れてしまうという課題があった。これに対し同研究グループは昨年、微量のマンガンを添加することで力を加えても急には壊れず、樽状に変形可能なMg合金を開発していた。ただ、同合金が特性を発揮するのは、力を加える速度が遅い場合に限られ、落下や衝突など高速で力が加わった場合にも壊れない性能が求められていた。

 今回の開発材は、マンガンの代わりにビスマスを添加し、同合金の鋳造材を100度程度に加熱して押出加工を行い、結晶粒を微細化した。同開発材を室温で、一般的な評価速度よりも100倍程度速い速度で圧縮したところ、急には壊れず、樽状に変形できることが確認できた。

 変形速度に関わらず、大きな力を加えても瞬時に壊れず、市販のアルミ合金に匹敵する吸収エネルギー特性があるため、落下や衝突を想定した分野でも安全を確保したMg合金部材の供給につながることが期待される。安価な元素であるビスマスを微量に添加することで製造できることも特長。また、従来合金は加熱時に100度以上に加熱する必要があったが、新合金は同工程が不要となる。

 今後は、さまざまな分野での応用展開につなげるため、素材のスケールアップ化や、さらなる高強度化、高速度変形化の両立を目指す考え。

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