《音楽日々帖》夜明け前の おめざmusic

 東京は1月上旬が、1年のうちでいちばん日の出が遅くなります。外がまだ暗いなか出かける方もいらっしゃるでしょう。今月は、朝5時からのラジオ番組を担当する私が、1日を始めるための「おめざmusic」をご紹介します。

 まずはウォンクの『Castor』。ヒップホップやソウルの要素が溶け込んだ、海外のジャズシーンと共鳴するサウンドが特徴です。なかでもロバート・グラスパー版「Lovely Day」を思わせる「Promise」は、フルートが心地いいスイートな1曲。以前、番組の1曲目にかけたら、リスナーさんに好評でした。ちなみに、今年の干支である犬ジャケです。

 寒い朝を温める音楽なら、ニーナ・シモンの『Here Comes The Sun』。太陽が新しい季節の始まりを予感させる「Here Comes The Sun」や、辛いときにも希望を与えて励ましてくれる「O-O-H Child」など、心まで温かくなる名曲が詰まっています。ニーナ・シモンのボーカルもいっそう優しく感じられて、例えるならお母さんみたいな1枚です(笑)。

 テメ・タンは夜明け前に聴くと、どこか旅先の国で目覚めるようなワクワク感を味わえます。最初に聴いた時、どこの国の音楽かまったくわかりませんでした。歌詞はフランス語で、少しアフリカンな雰囲気もある、楽しげなエレクトロ。彼はコンゴとベルギーを行き来しながら育ち、スペイン、南米、日本にも滞在したことがあるそう。クレジットの最後には「ありがとう」が5カ国語で書いてあって、本当にボーダーレスな人なんだと思いました。音楽のパワーを借りて、2018年もがんばりましょう!

WONK『Castor』

 東京を拠点に活動する4人組エクスペリメンタル・ソウルバンド。2016年にデビューし、活動の幅を世界へ広げている。ポップな本作『Castor』は実験的な『Pollux』とのツインアルバム

epistroph 2017

NINA SIMONE『Here Comes The Sun』

 1958年デビュー。20世紀のブラック・ミュージックを語る上で不可欠なアメリカの女性シンガー/活動家。本作ではビートルズや、ボブ・ディラン、フランク・シナトラの名曲を歌う

Sony Music Japan International 1971

TÉMÉ TAN『Témé Tan』

 コンゴとベルギーの血を引くマルチ・インストゥルメンタリスト/プロデューサーのデビュー作。伝統的音楽からマイケル・ジャクソン、ラップなど多様な音楽の影響を受けている

Hostess 2017

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