「浦賀奉行所」 地域の誇りに 復元めざす地元グループ 横須賀市

浦賀奉行所復元を熱く語る山本氏

 西浦賀の浦賀奉行所跡が昨年末、所有者の住友重機械工業から市に譲渡されたことを受けて、同奉行所の復元運動を展開している地元グループが実現に向けて動き始めた。今月20日に開かれた「中島三郎助まつり」前夜祭で運動の中心的な役割を担う郷土史家の山本詔一氏が同奉行所にまつわる講演を行い、2020年の奉行所開設300周年をキーポイントに、跡地の利活用の方向性を定めるとともに、史跡指定の重要性を述べた。

 跡地は現在、更地の状態で横須賀市が今後、活用プランを打ち出す見通し。「地元では、賑わい拠点として奉行所の復元を待望する声がある一方、環境変化への拒否反応や防災拠点として公園化を求める人もいる」と講演の中で山本氏。加えて、立地場所が住宅街の一角であることから交通アクセスの問題をはらんでいることにも触れた。

 現状では跡地を示す史料として、周囲の掘割がわずかに名残を留めているのみ。山本氏は発掘調査の必要性を説いており、「出土品はもとより、残されている間取り絵図面と突き合わせて検証することで新たな発見がある」とした。

 現実問題として、現行の建築基準法との兼ね合いなどから建物の復元はハードルが高い。そこで山本氏が考えているのが、当面は門や塀の整備だけを行い、資料館的な役割を担う施設を設けて、浦賀の史料を一元化するアイデアだ。最新VR技術を用いて、仮想現実として浦賀奉行所の疑似体験も想定している。

 山本氏が会長を務める浦賀奉行所復元協議会では、「完全復元には30年を要する」という認識。長期戦を覚悟しており、時の経済事情などに左右されずに、文化財を保護・維持していくためには国の史跡指定を受けるのがベストだと判断している。「市にそうした動きがなければ、陳情や請願運動も考えたい」と力を込めた。

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