被害者への返済「困難」 はれのひ負債、法人優先

 振り袖販売・レンタル業者「はれのひ」(横浜市中区、破産手続き中)が突然営業を取りやめ、成人の日に晴れ着を着られない新成人が相次いだ問題で、同社側は総額10億円を超える見込みの負債の返済について「法人などが優先され、個人の被害者への返済は厳しい」との見通しを示した。また、事業継続に向けて会社の売却先を探したが、昨年12月末に交渉が決裂したと明かした。

 同社の篠崎洋一郎社長(55)は26日夜、問題発覚後初めての会見を横浜市内で開き謝罪。同社側によると、同市、東京都八王子市、茨城県つくば市、福岡市の各店舗での契約者は、今年から2年後の成人式分までで約1600人。このうち横浜の店舗が567人で最多だった。

 同社側によると、総額10億円を超える見込みの負債のうち、金融機関12社からの借り入れが約3億8千万円、関連業者約270社への未払いが約1億8千万円、税金の滞納分が約5500万円、未払い賃金が約1800万円。個人の被害者の損害は3億円を超えるという。

 一方、会見では会社の資産はほぼなく、篠崎社長個人の資産は「不動産はなく、預金は数十万円のみ」という状況が明らかになった。今後、破産管財人による資産の確認などを経て債権者に対する配当が決まるが、会社保有の資産を超える額の返済は難しい上、法人などが優先されるといい、個人の被害者への返済は「ゼロに近い」(関係者)とみられる。

 会見では、顧客をだます意図を持って契約を続けた詐欺の認識も問われたが、篠崎社長は明確に否定した。

 同社側によると、はれのひは事業継続に向けて他業種の4社と吸収合併・提携計画などを交渉。うち1社からは、有力な支援を期待できる状況になったが、昨年12月末に破談したという。こうした経緯を前提に、会社側のある関係者は「ぎりぎりまで事業継続の検討を続けた。(顧客に対する)詐欺罪の立件は困難では」との見通しを示している。

 ただ、篠崎社長は「ミス」と弁明しているものの、同社はホームページ上に実際よりも多い金額の資本金を掲載するなど経営状況に不透明な点がある。業界に詳しい関係者は「今後は破産管財人による財務状況の調査や、県警が進める経営実態の解明が焦点となる」と話している。

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