投票率 40%割れ?挽回? 前回は過去最低 全国的に低落傾向 識者「有権者も自覚を」

 40・72%-。これは過去最低を記録した前回2014年知事選の投票率だ。同じ顔触れとなった今回は40%台を切るか、挽回できるかの瀬戸際。関心を高められず低落傾向にあるのは全国的な風潮だが、識者は有権者の自覚も求める。

 「投票に行こう!!」。27日、現職の中村法道候補(67)の背中にはこんな文字が張り付けられていた。陣営幹部は「歩く広告塔だ」と効果を当て込む。新人の原口敏彦候補(56)も演説のたび自分を売り込むだけでなく、投票そのものを呼び掛けている。

 過去5回で投票率が最も高かったのは1998年の68・78%。4期務めた高田勇氏が退き、新人4人の争いを金子原二郎氏(当時衆院議員、現参院議員)が制した。金子氏辞職に伴う衆院長崎4区補選との同日選となり、投票率を押し上げた。

 続く2002年は共産系新人との一騎打ち、06年は金子氏が新人2人を抑え3選したが、50%前後で推移。中村候補が初当選した10年は、新人7人の乱戦で盛り上がったこともあり60・08%にアップ。一転、前回は20ポイント近く落ち込んだ。

 県内でこれまで実施された衆参両院選、県議選、21市町長選・議員選と比べても、前回知事選の投票率は最低だった。県政は市町民にとって比較的遠い存在と捉えられがちな上、全国一斉の国政選挙ほど報道も手厚くないという事情もあるようだ。

 全国の直近の知事選と比べたらどうか。九州内では15年4月の福岡の38・85%に次いで、本県がワースト2位。福岡も現職と新人が争った。一方、同じ現新一騎打ちだったにもかかわらず、14年11月の沖縄は64・13%。米軍普天間飛行場移設の是非が争点となり、辺野古反対派の翁長雄志氏が初当選を果たした。

 全国最低は11年7月の埼玉の24・89%。15年8月も26・63%でワースト3位だった。これを受け16年、同県が有権者2千人に実施した意識調査によると、低投票率の原因は(1)政治に関心がない人が多い(2)政治への不満や不信の表れ(3)投票したい候補者がいない-の順だった。同県選管は「“埼玉都民”とも言われ、東京都内に通勤通学する人が多い。県外出身者も多く、地域への関心が高まらない」と頭を悩ませる。

 地方の本県はどうか。旧チェコスロバキア出身で長崎大多文化社会学部のコンペル・ラドミール准教授(比較政治学)は「これまで決定的な失政がなく、無難に進めてきたという信頼ではないか。一方で、県民の関心を集めるような未来像を十分に示していないともいえる」と分析する。

 旧チェコは1989年の革命で民主化されるまで、共産党の一党独裁下で選挙の候補者が限られていた。90年から自由選挙が実施され、民主主義への期待が高まり当初は9割の投票率だったが、「政治への無関心や若者の政治離れが進み、現在は5、6割。日本と同じような状況」という。

 このまま投票棄権が増え続けた場合、コンペル氏は「県民が身の回りで起こる物事を認識し、話し合いながらまちをつくるという意識が低下し、社会への無力感につながっていく」と警鐘を鳴らす。

 選挙を「社会参加につながる一つの装置」とみなすコンペル氏。有権者に対し「本県の未来を決める重要な判断を皆さんが行っていることを忘れないでほしい」と呼び掛けた。

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