2018長崎県知事選 変化の兆し 触れられず 基地

 14日朝。かすみがかった佐世保港に全長約250メートルに及ぶ巨大な艦船が姿を現した。米海軍の強襲揚陸艦ワスプ(4万532トン)。同型艦のボノム・リシャールに代わり、佐世保基地に配備された。

 ワスプは米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)のF35B最新鋭ステルス戦闘機を艦載機として運用する。即応態勢を強化し、中国や北朝鮮などの動きをけん制する狙いがあるとみられる。

 海兵隊員約1600人を輸送できる。ジョン・ハワード艦長は「より優れた能力と力量を戦力に提供する」と意義を強調した。

 米軍側は「従来の計画に基づいた配備」と説明するが、米軍の動向を監視する市民団体、リムピース佐世保の篠崎正人編集委員は「なし崩し的な基地機能の変化につながる」と懸念を示す。

 佐世保基地はこれまで、補給や部隊支援が主な役割だった。ただ、最新鋭戦闘機を搭載し、海兵隊員の重要な輸送手段となるワスプが配備されたことで「佐世保が戦闘部隊の出撃基地となる可能性がある」と推察する。さらに地域社会への“余波”も危惧。「戦闘地域に出向く部隊の雰囲気が、これまでフレンドリーだった町との交流にまで影響しないか心配だ」と明かす。

 北朝鮮は金正恩(キムジョンウン)政権下で、弾道ミサイルの発射を繰り返している。北朝鮮は「在日米軍基地を標的にした訓練」と挑発。緊迫する周辺国の情勢と呼応するように、佐世保では、これまでになかった動きが出ている。

 米海軍の原子力潜水艦は昨年26回入港し、2年連続で過去最多を更新した。相次ぐ弾道ミサイルの発射が背景にあり、米軍が原潜も投入して動向を探っているため、佐世保が重要な寄港地となっていると分析する専門家もいる。

 航空自衛隊は昨年12月、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の展開訓練を海上自衛隊佐世保基地で県内で初めて公開した。訓練ではPAC3の発射機を岸壁に設置。空自関係者は「北朝鮮への備えがあることを示し、安心感の醸成につなげる」と力を込めた。

 こうした変化の兆しはあるものの、知事選では基地問題についてほとんど触れられていない。

 篠崎氏は「安全保障の問題を政府に任せきりにせず、地方自治体も考えるべきだ」と指摘。その上で「地域住民の生活に影響を与える可能性があることについて、政府とは別次元で考えるべきだ。ワスプ配備も地元から丁寧な説明を求める必要があった。県知事には情報収集能力と交渉力が求められる」と注文を付けた。

昨年12月の展開訓練で、岸壁に設置されたPAC3の発射機=佐世保市干尽町

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