小崎さんにポーランド勲章 「愛と平和」伝える 国内2人目の受章

 昭和初期の長崎で布教したカトリックの聖人で、ポーランド出身のコルベ神父の功績を伝える「語り部」として長年活動してきた聖母の騎士修道院(長崎市本河内2丁目)の修道士、小崎登明(おざきとうめい)さん(89)に28日、同国の外務大臣名誉勲章「ベネ・メリト」が授与された。同国側によると、日本人の受章は2人目。小崎さんは「夢のような気持ち」と喜びをかみしめた。

 小崎さんは17歳の時、爆心地から2・3キロの三菱兵器住吉トンネル工場で作業中に被爆。唯一の肉親だった母が行方不明になり、原爆孤児として聖母の騎士修道院に身を寄せた。

 同修道院で知ったのは、設立者のコルベ神父のことだった。神父は1930年から6年間、長崎で布教して帰国。41年、ナチス・ドイツがユダヤ人を大量虐殺したポーランドのアウシュビッツ強制収容所で、死刑宣告された妻子ある男性の身代わりを申し出て殺害された。

 小崎さんは長年、コルベ神父の偉業や自らの被爆体験を修学旅行生らに講話。ポーランドに何度も渡航し、神父の足跡を訪ね、神父に助けられた男性の証言を聞き取った。近年まで同修道院の聖コルベ記念館で来館者の案内も続けていた。

 ベネ・メリト勲章は、国際社会でポーランドの地位向上に貢献した人物に贈っている。同国側は、小崎さんの活動が日本とポーランドの絆を強めたと高く評価した。

 この日は、ポーランドのヤン・ジェジチャク外務副大臣が長崎市平野町の長崎原爆資料館を訪ね、小崎さんに勲章を授けた。小崎さんは、神父に助けられた男性が「神父に『ありがとう』と言えなかった」と泣きながら後悔していたエピソードを紹介。講話を通し、「大切な人に『ありがとう』と伝えることの大切さを訴えてきた」と振り返った。

 コルベ神父は、戦争が生んだ人間の暗い闇の中に「愛」という希望の灯をともした。小崎さんは「愛と平和を貫いた人がいると若い人たちに伝えたい」と願っていた。

ジェジチャク副大臣(中央)の横で受章を喜ぶ小崎さん(左)=長崎原爆資料館

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