アイコー、鉄筋施工の図面作成事業強化 ベトナムに現地法人、日本のデジタル設計需要に対応

 鉄筋加工販売・施工大手のアイコー(本社・東京都中央区、社長・相場康雄氏)は、鉄筋施工の図面作成事業を強化する。このほどベトナム・ホーチミン市に同事業の現地法人「アイコーベトナム」を設立。鉄筋工の少子高齢化や建築案件の高度化を背景に日本で市場ニーズが高まる鉄筋施工の「見える化」に対し、CADを駆使した図面作成の対応能力を高め、デジタル設計の需要増に対応する。

 アイコーベトナムはホーチミン市の中心部に事務所を開設、アイコーの藤池晴行上席執行役員が社長を兼務する。新たに現地でCADをはじめデジタル設計技術を習得した建設専門学校の卒業生5人を採用し、日本から派遣する指導役の社員2人が常駐する。いずれの新入社員も昨年12月から今年5月にかけて、アイコーの本社でOJT形式による実務研修を受けている。

 アイコーではこれまで、本社の施工企画部が図面作成を手掛けてきた。アイコーベトナムが本格稼働する6月以降は両国で業務を分担し、総勢約30人の体制で収まり図や配筋図など鉄筋施工に必要な図面を作成する。

 建設業界では、鉄筋コンクリート(RC)造をめぐり、建築物の躯体図から鉄筋を配置(配筋)する場所や本数、大きさなどの基礎情報を手作業で図面に反映するのが一般的だが、鉄筋を収める位置や仕様の変更など高度な知識や経験が求められる場面が少なくない。一方アイコーは、グループ会社と共同で鉄筋施工の図面をつくるCADシステムを独自開発。電送が可能な3D(三次元)の画像で配筋の状況を把握でき、誤出荷や取り付け工事の失敗をはじめ人為的なミスの発生を未然に防げるため、近年は大手を中心にシステムの導入を希望する総合建設会社(ゼネコン)が増えている。

 アイコーは顧客における高い品質管理体制の確立に向けて、建設現場の計画段階から加工、運搬・取り付け・検査にかけての鉄筋工事全般を電子情報技術で一元的に管理できるサポート総合システムを展開している。同システムは図面のデータとも連動し、鉄筋工事に従事する作業者の経験値に左右されない現場の運営・管理につながる。

 日本市場では鉄筋施工をめぐる作業の「見える化」に対する潜在需要が大きい。アイコーは自社のホームページ(HP)にベトナム語の会社案内を掲載するなど、中長期的な視点でアイコーベトナムを中心に図面作成の事業を拡大していきたい考えだ。

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