『blank13』 死を観て、生を考える作品

(C) 2017「blank13」製作委員会

 映画『昼顔』などで、女性たちの心を掴んだ俳優の斎藤工が、初めて長編作品の監督に挑んだ作品です。彼はこれまで、いくつかのショートムービーを監督していて、その作品を観るたびにとても映画センスのある方なのだなあと度肝を抜かれていたのですが、初めての長編映画でもそのセンスは損なわれることもなく、とても素晴らしい作品でした。俳優さんが監督をすると、いろいろなバイアスがかかってしまうのは必然で、このレビューすら「イケメンだから褒めているんじゃないか」なんて疑われそうですが、「イケメンのくせにいい映画を撮ったな!」という軽い嫉妬も含めてのレビューであります。

 13年前、母親に借金を残して蒸発した父親が、余命3ケ月の状態で入院していることが見つかったことから始まる本作。3ケ月後に亡くなった父親の葬式に集まった、ほんの少ししかいない、それもちょっと怪しげな弔問客が父のエピソードを語りだし、家族が知らない13年間の空白が埋まっていきます。

 人の価値って、どうやって決まるのでしょう? 自分のために泣いてくれる友人の多さ? 家族の多さ? それとも豪華な葬式? 人間にとっては終わりでもある「死」を映画で観せることで私たちに「生」を考えさせる作品だと思います。大切な人や家族を傷つけてしまったり、大きな過ちを犯してしまったり、私もこれまでの人生でたくさんの間違いを犯してきました。でも、大切なのは振り返ったって変えられない過去を振り返らずに、どう生きるか。どんな風に生きていくべきか。そんな大切なことを考えさせてくれる映画でした。★★★★★(森田真帆)

監督:齊藤工

出演:高橋一生、松岡茉優、斎藤工

2月3日(土)から全国順次公開

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