『羊の木』 殺人犯がもしも隣人になったなら?

(C) 2018『羊の木』製作委員会 (C) 山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

 漫画家の山上たつひこと、いがらしみきおによる社会派漫画を、映画『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督が独自のアレンジを加えて実写映画化。殺人を犯した元受刑者たちを自治体が受け入れる新・仮釈放制度が制定されたという、なんだか近い将来、本当に起こりそうな設定です。自治体として名を上げようと、住民たちには内緒で6人の受刑者を受け入れることになったのが魚深市。市役所に務める主人公の月末は、彼らの受け入れ担当者となります。

 殺人を犯した人が、世の中にぽーんと出てきたとき、私たちが彼らと友人になれるかなれないか? でもそれって結局は自分たちの感覚によるのではないかと、そんなことを感じさせる映画です。この映画に出てくる殺人犯たちは十人十色。のたうちまわるほどに悩みながら人を殺めた人間もいれば、平然と殺してしまった人間もいる。映画の中では、それぞれの元受刑者たちが、町民たちと「人間同士」の付き合いをしていきます。クリーニング屋さんでおかみさんにガミガミ叱られながら信頼を築き上げていく人もいれば、恋人を作る人もいる。そんな中、受刑者を怖がりながらも心を通わせていていく主人公の月末はとても人間らしい。揺れ動く心の機微を、錦戸亮がとても繊細に演じています。元受刑者役の俳優たちも素晴らしい。松田龍平、北村一輝、優香ら、錚々たる役者陣が、心に何重もの層を持った殺人犯を熱演しています。★★★★★(森田真帆)

監督:吉田大八

出演:錦戸亮、松田龍平、木村文乃、北村一輝、優香

2月3日(土)から全国公開

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