2018長崎知事選 周産期医療体制に弱さ 問われる支援策 専門医が不足、養成に8年必要

 妊婦や胎児、新生児を扱う周産期医療の弱さが指摘される本県。強化に向けて長崎大学病院(長崎市)は、重症の妊婦や新生児に高度な医療を施す「総合周産期母子医療センター」(総合型)の2019年度開設を計画している。周産期医療は晩産化や少子化への対策としても必要性が高まっている一方で、専門医の不足などから体制づくりは容易ではなく、政策的後押しが求められる。県などの支援の在り方が問われる。

 「人口減に対応し、安心して産み育てられる環境をつくらなければならない」

 同病院の増崎英明病院長(産婦人科教授)の言葉には、危機感がにじむ。

 県内では現在、長崎医療センター(大村市)に唯一の総合型があり、「地域周産期母子医療センター」の▽長崎大学病院▽長崎みなとメディカルセンター(長崎市)▽佐世保市立総合病院-と連携して対応。妊婦と胎児を24時間管理する母体・胎児集中治療管理室(MFICU)が長崎医療センターに6床、新生児集中治療室(NICU)が4施設計27床整備されている。

 しかし、国が定める「出生1万人当たりNICU25~30床」との整備目標に対し、本県は24・5床(15年)と未達成。救急搬送で近くの病床に空きがない場合は他の病院に運ばれ、中には県外に送られるケースもある。入院は長期化することが多く、生活圏を離れた患者や家族の負担は大きい。

 県によると、16年度の救急搬送で、この4施設が母体や新生児を受け入れられなかったのは計70件。うち42件が長崎大学病院と長崎みなとメディカルセンターで、長崎市内の病床不足が見て取れる。

 足りないのは病床だけではない。長崎大学病院によると、県内の母体・胎児専門医は10人、新生児は5人だけ。周産期は激務が敬遠され、全国的にも専門医のなり手が少ない。同病院は総合型の整備により、県内全域を支える人材の育成を急ぎたい考えだ。

 総合型の新設には県の指定が必要。県は昨年、設置を認める方針を表明。同病院は院内の一部を改修し、MFICU6床を新設、現在6床のNICUを2倍の12床に増設する計画で、今年夏にも着工予定。10億円近くの初期投資額を見込んでいる。

 整備には国、県の補助があるが、病院側は県に人材育成の面を含めた追加支援を要望している。増崎院長は「一番の問題は人材不足。専門医を1人育てるのに8年かかる。行政のバックアップが必要」と強調。県医療政策課は「ソフト面を含めて具体的な支援策の検討を進めている」としている。

総合周産期母子医療センターの開設を計画している長崎大学病院。県の支援の在り方が問われる=長崎市坂本1丁目

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