【共英製鋼のベトナム港湾事業子会社「TVP社」事業開始】〈木下勝之社長に聞く〉共英の電炉子会社「VKS社」などへ、鉄スクラップ供給軸に 周辺メーカーの鉄鋼製品輸出も

 共英製鋼のベトナム港湾事業子会社、チー・バイ・インターナショナル・ポート社(TVP社、共英出資約59%)が2月1日から正式に事業開始する。どう事業展開していくのか、木下勝之社長に聞いた。(ホーチミン発=小林 利雄)

――事業の概要・目的を。

チー・バイ・インターナショナル・ポート社・木下社長

 「TVP社は隣接するビナ・キョウエイ・スチール社(共英製鋼の電炉子会社・VKS社)が営業生産を開始した翌年の1997年に設立された。多くの困難があり、歴代社長や共英製鋼本体の担当者の長期にわたるご苦労を忘れず、しっかり事業運営していきたい」

 「VKS社向けの鉄スクラップ供給を軸に、周辺の電炉メーカーへの鉄スクラップ供給、鋼板単圧メーカーへの素材コイル供給や、これらメーカーからの鉄鋼製品の輸出などをベース事業として展開していく。将来的には鉄鋼以外の製品も扱いたい。1月22日の開港式典でも日本の商社や鉄スクラップ会社から多数ご出席いただき期待されていることを痛感した」

――港湾の規模は。

 「場所はホーチミン市から南東に車で約1時間のバリア・ブンタウ省フーミーのチー・バイ港湾地区にある大きな入り江。ポスコの岸壁、日本のODAで建設された公共岸壁、コンテナ専用岸壁、民間会社の岸壁などが並んでおり、ベトナム南部における港湾基地になっている」

 「TVPの敷地は42・2ヘクタール。このうち1期分として25・8ヘクタールで港湾建設した。岸壁は5万DWT(載貨重量)までのパナマックス級船舶が着岸できる主岸壁(長さ300メートル・水深14メートル)と、5千DWTや2千DWTの内航船などが着岸できるバージバース(長さ315メートル)。岸壁クレーン(40トン)2基。クローラークレーン(250トン)1基、エクスカベーター、フォークリフトなど荷役機器と、倉庫はVKS専用のスクラップ倉庫(建屋面積1万平方メートル、在庫能力3万6千トン)と、一般鋼材倉庫(同7800平方メートル)、メンテナンスショップ(同1440平方メートル)などがある」

――荷扱い量は。

 「鉄スクラップは24時間操業で当面、日当たり3千トン。年内に同5千トン、年間180万トンを目標にしている。周辺の公共バースでは日当たり1千トン程度で、3年前にチー・バイ港湾地区で鉄スクラップ運搬船の滞船問題が発生。日本からのフレートが37~38ドルだったものが50ドルに跳ね上がった。これはVKSなど鉄スクラップ購入者が支払うのだが、滞船問題が発生しなければフレートは安くなる。『TVPは滞船なしで円滑に荷揚げできる』ということを目指しており、周辺の岸壁より荷揚げが速いことを『売り』にしていく」

――なぜ周辺より速く荷揚げができるのか。

 「TVPでは船内の鉄スクラップを荷揚げする場合、直接トラックに積み込まず、岸壁に搬入したボックスにまず入れて、短時間で船内を空にする方法をとっている」

――港湾事業のノウハウはどこから。

 「昨年7月に、港湾事業の老舗である辰巳商會(大阪市)に資本参加していただき、同時に技術者や現場責任者を派遣していただいている。その指導のもと現地従業員を教育しながらやっている」

――VKS以外の鉄鋼会社向けの荷扱いもしていく。

 「フーミー地区の周辺にはVKSやポミナ、東和、ポスコSS、サザンスチール、アンフンタンなどの電炉や、CSVC、ブルースコープ、ポスコ、丸一鋼管子会社のサンスコなど鋼板メーカーがある。特に電炉鉄筋・線材の生産ではベトナム全体で1千万トン市場のうち約450万トンをこのフーミー地区から生産出荷されており、これらメーカーにTVPを活用していただくよう営業展開していく」

――2期工事は。

 「地盤改良中で3年後、早ければ2年後くらいに操業開始していきたい。2期工事完了後は年間扱い量500万トンにしていく」

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