【工場ルポ】〈新大型レベラー稼働など、積極投資続ける三幸金属工業所〉品質・納期対応力を向上 自社メンテナンス体制も強化

 新日鉄住金系の熱延コイルセンター、三幸金属工業所(本社・堺市堺区、社長・楠本雄宏氏)は、生産効率・納期対応力向上などを狙いに、母材コイル倉庫開設や新大型レベラーの稼働など積極的な投資を続けている。新大型レベラーが稼働した本社工場(大浜鉄鋼センター)を中心にルポする。(宇尾野 宏之)

新レベラー、時間当たり加工量50トン目指す

 大浜鉄鋼センターで約17億円を投じた新大型レベラー。このほど、トライアル運転を完了した。これに伴い老朽化した旧レベラーを停止し、撤去を始めている。

 新レベラーの加工範囲は板厚1・6~12・7ミリで、板幅は7幅まで対応できる。新レベラーの設置場所は、もともとは母材コイル置き場だったが、2015年に近接地に工場を購入し、母材コイルのストックヤードとなる「大浜第2鉄鋼センター」を開設。敷地面積は本社工場を若干上回り、ここに母材コイルを移管することで新レベラー設置が可能となった。

 同社が新レベラーで狙う効果の一つは、生産効率の向上だ。レベラー入側に母材コイルを四つ同時にセットできるほか、出側にも自動化された大型パイラー・結束機を備えている。これまで旧レベラーでは1時間当たり加工量は30トンだったが、これを50トンにまで高めたい方針で、楠本社長は「操業ノウハウを積み上げ、性能さえ発揮できれば、達成できる数字だと考えている」と話す。

 このほか新レベラーの特徴として、旧レベラーはレベラー部が二つだけだったが、新レベラーには「ラフ」「ライト」「ヘビー」「シート」という四つのレベラー部がある。また、必要に応じて裏面検査ができるようにライン上に作業員が入れるよう、くぼみが設けられている。「精度や生産効率向上だけでなく、自動化により安全性も高まるはず」(楠本社長)としており、「より良い製品を短納期で出荷できる」(同)体制づくりを進めていく。

ハイテン材や厚物など多彩に対応

 大浜鉄鋼センターには新1号ラインのほか、3号レベラーがある。3号はハイテン加工に対応しているのが特徴で、ハイテン対応としたのは13年。パイラー・仕上げレベラー部・チョッパー・モーターなどを改造・更新し、印字装置も備えた。

 また、同社は堺浜工場に加工板厚25ミリの大型レベラーがあり、足元の月産量は約6千トンで推移している。11年に稼働を始めてから、順調に受注を増やし、ここ数年は月間6千~7千トンの生産を続けている。

 熱延レベラーに関して、他社にはできない付加価値の高い加工ができるのは同社の強みの一つとなっている。

人材確保・育成が課題

 「これまで工場で10年続けて新卒を採用してきたが、今年度はできなかった」(同)―コイルセンター業界で人手不足が問題になりつつあるが、同社にとっても今後の課題となるのは人材育成と人材確保。

 同社は12年から人材育成の一環として、社員のモチベーションアップを狙いとした企画「GSP(グッド・スマイル・プロジェクト)」を続けている。同企画は「仕事・笑顔・感謝」をテーマに、グループ会社を含めた全社員の投票によって月ごとに受賞者を選出。受賞者はホームページで公開されている。

 楠本社長は今後の展望について「設備投資について、大規模なものは一通り完了した。今後はメンテナンスに関しても自社で対応できるようにする必要がある。人材の採用が難しくなってきているが、リクルート活動に注力するとともに、社員のレベルアップを進め、コイルセンターとしての競争力を高めていきたい」と話す。

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