【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(16)】〈日鉄住金総研〉知財戦略、強力に後押し 特許出願の実務引受け拡大

 日鉄住金総研は知的財産分野、鉄鋼技術分野を中心に専門性の高い情報を調査・分析する新日鉄住金グループのシンクタンクだ。経営戦略の立案に資する情報提供や提言を通じ、新日鉄住金グループの競争力を支えている。

 日鉄住金総研の中核事業は主に新日鉄住金から受託する特許調査などの知的財産事業。新日鉄住金の知財戦略に必要な先行技術調査、特許マップ調査といった幅広い調査業務を手掛けている。

 グローバル戦略を進める新日鉄住金にとり、知財は世界と戦うための重要な武器の一つ。日鉄住金総研の川合良彦社長は「いかに強い特許を効率的に出していくかが競争力を左右する時代だ。新日鉄住金を強力にバックアップしていきたい」と力を込める。

 知財事業の強化はここ数年の大きなテーマだ。新日鉄住金の現行中期経営計画(2015~17年度)には日鉄住金総研の知財機能の強化が盛り込まれている。具体的には新日鉄住金本体が手掛けてきた特許出願の実務の一部を日鉄住金総研に移す計画だ。新日鉄住金グループ全体で強い特許網を効率的に構築するための取り組みで、移管対象となる外国特許出願実務については「昨年までに移管をほぼ達成し、業務の安定化と効率化も進めてきた」(川合社長)。

 新日鉄住金が製鉄所ごとに対応してきた発明の発掘・知財権利化機能についても、部分的に日鉄住金総研へ移す。一昨年から作業を進め、これまで室蘭製鉄所の一部と関西地区(和歌山、広畑の両製鉄所、尼崎製造所、製鋼所)から移管を受けた。東日本地区(君津、鹿島、釜石の各製鉄所)、九州地区(八幡、大分の各製鉄所)についても検討する。

 知財の重要度が増しているのは新日鉄住金本体だけでなくグループ各社も同じ。今後はグループ各社の知財戦略強化も後押ししたい考えだ。

 一方、もう一つの柱となる調査研究事業では、より高度な依頼に対応できるよう情報の収集・分析力に磨きをかけている。調査対象は「競合他社・他素材のベンチマークや将来技術の予測」「市場戦略の提言」など多岐にわたり、「国内市場に参入した海外競合製品の顧客満足度調査と対抗策提案」といった調査例もある。最近では新日鉄住金の品種事業部や技術開発本部などに対し、戦略構築の前提となる課題の提示や提言を行う機会も増えているという。グループ各社からの依頼も増加傾向だ。

 日鉄住金総研の新日鉄住金向け業務比率は7~8割といわゆる「内販」が大半を占めるが、官公庁の公募調査事業など「外販」分野にも引き続きアンテナを高く構えている。同分野向けではここ数年で提案力と受注力を着実に高めた一方、収益力にはなお課題が残る。案件に応じ大手シンクタンクとの連携も模索するなどして収益基盤を固めていく。

 人員規模は拡大が続く。知財事業の強化もあり、新卒に加え、中途採用でも外部の特許事務所の出身者など経験豊かな人材を戦略的に確保。社員数はこの5年でほぼ倍増した。鉄鋼以外の多様な分野からも優秀な人材を集めた結果、業容拡大の推進力になっているという。

 同社にとって「資産は人。人が勝負」(同)。将来を担う人材の確実な育成にも力を注ぐ方針だ。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=東京都千代田区

 ▽資本金=5千万円(新日鉄住金の出資比率100%)

 ▽社長=川合良彦

 ▽売上高=26億7100万円(17年3月期連結)

 ▽主力事業=技術・産業調査、経済産業調査、知的財産調査、人材育成事業、ビジネスサポート事業

 ▽従業員=223人(17年4月時点)

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