DJI Mavic Air実機レビュー〜操作性も飛行の安定性も新次元〜 1月28日から発売が開始されたDJIの最新ドローンMavic Airの実機を「DJI ARENA BY JDRONE TOKYO」を運営するDJI の正規販売代理店である株式会社日本サーキット(神奈川県川崎市)の協力を得てレビューを行った。

安定感が増したDJI MAVIC AIR。

進化したスマートキャプチャーの反応の良さ

ジェスチャーで機体をコントロールするドローンジャーナリストの田中亘氏。機敏に反応する機体に驚いていた=1月29日、東京都勝葛飾区のDJI ARENA BY JDRONE TOKYO

 DJIのドローンは、ジェスチャーと呼ばれる手の動きで機体やカメラを操作する機能が、以前の機種から装備されていた。Mavic Airでは、そのジェスチャーが大きく進化した。ドローンの離陸や移動などは、すでにDJI Sparkでも実現していたが、スマートキャプチャーという最新のジェスチャー機能では、新しいサインが加わり飛行の反応も大幅に改善された。実機レビューでは、初心者でも簡単に空撮自撮りが楽しめる基本的なジェスチャー操作を最初に体験した。
 まず、コントローラーに取り付けたスマートフォンのアプリの画面から、スマートキャプチャーの利用を確認して、被写体となる人物を認識するように設定する。次に、地上に置いたMavic Airに向けて手のひらをかざすように向ける。すると、機体のLEDが反応してプロペラが回転し離陸する。離陸後は、手のひらを上下左右に動かすとMavic Airも移動する。その反応速度について、DJI ARENAを運営している日本サーキットの天野氏は「Sparkよりも優れている」と評する。
 そして、両手の手のひらをMavic Airに向けてかざすと、機体は少し被写体に近づいてくる。この状態で、ゆっくりと両手を開いていくと、最大で6mの距離までMavic Airは遠ざかる。離れる距離は両手の開き方で調整する。目的の距離まで遠ざかったら、再び片手だけをかざすと、機体を上下左右に移動できる。最後に、希望する位置までMavic Airを移動させたら、片手でピースサインを作ると、機体のLEDの点滅が早くなり、静止画の撮影がスタートする。動画を撮影したいときは、自分の顔の前でフレームの形を作る。すると、LEDが消えて録画が開始される。この状態で、手を下げて自分が動くとMavic Airも認識した被写体を追尾して回転や移動する。カタログによれば最大で16名の被写体を追尾できる。録画を停止するには、再びフレームの形を作る。
 飛行を終了させるときは、両手の手のひらをかざしてMavic Airを自分の近くに呼び戻す。自分の手前でホバリングしている状態になったら、片手だけにして手のひらを少し下げて機体を降下させる。そして、下に向けた手のひらをそのままの状態で数秒キープすると、Mavic Airは着陸の意図を判断して、自動的に地面に接地してプロペラの回転を止める。初めてMavic Airを使う人でも、一連の操作を1〜2回体験すれば、すぐに使いこなせるようになるだろう。

コンパクトでスティックの操作性も良好なコントローラー

 Mavic Air用に新しく開発されたコントローラーは、スティックを脱着式にしてコンパクトに収納できるデザインになっている。Mavic Proのオーナーである当サイト編集長によれば「収納するときに、コントローラーの出っ張りが邪魔だった」という。そうした不満が、Mavic Airのコントローラーにはない。また、コントローラーのスティックも操作性が良い。ちなみに、ジェスチャーで飛行している最中にコントローラーを使うと、自動的にマニュアル操作に切り替わる。再び、ジェスチャーを利用したいときは、スマートフォンのアプリの画面で操作モードを切り替える。飛行中の情報は、カメラの映像も含めて詳細にスマートフォンの画面に表示されるので、何か操作に困ったらアプリの情報を確認して適切に対処できる。
 例えば、前後と下方に装備されたセンサーが障害物を感知すると、アラーム音と対象物までの距離が画面に表示される。最新のセンサーシステムは、メインのジンバルカメラと前後にデュアルビジョンセンサーを、下方にはデュアルビジョンセンサーに加えて赤外線検知システムも備え、飛行中に3Dマップを構築して障害物を感知する。DJI ARENAのベーシックエリアで、実際に飛行させてみると、旗やゲートなどの障害物の手前で停止した。以前、こちらのアドバンスドエリアのゲートに、Sparkを衝突させてしまった経験がある筆者にとっては、かなり安心できる機能だった。ただし、ケーブルやネットなどは感知できないので、実際に飛ばすときには、やはり注意力を維持した操作が必要になる。

プロペラはたためないが、スマホサイズにアームはコンパクトにたため、Mavic Proでは面倒だったカメラ部分のジンバルを固定させるカバーもスライドさせるだけでワンタッチで着脱可能となった。

アクセサリ類も充実し軽量なバッテリーも魅力

 デモフライト後に、DJI ARENAの天野氏に売れ行きなどについて聞いたところ「Mavic Proのオーナーは、まだ様子を見ているようですが、すでに多くの予約と28日の発売日には在庫がすぐに売れました」という。DJIの他のモデルとの違いについては「Sparkの価格が改定になって、コンボキットとの差が5万円と安くなっています。この違いは、入門用のドローンを探している方々には、まだ魅力的だと思います」と天野氏。またMavic Proとの違いについては「飛行の距離」だと指摘する。Mavic Airのカタログスペックでは、約2kmまでの遠隔操作を明記しているが、数多くのドローンを操作してきた天野氏の経験則によると「バッテリーの時間を考えると2kmまで飛ばすのは、難しいかも知れない」という。Mavic Airの飛行時間は最大で21分となっているが、安全な飛行を考えると15〜16分ほどが妥当となる。一方でMavic Proの飛行時間は、最大27分(Platinumで30分)になる。そのため、遠くまで飛ばした空撮を狙うのであれば、Mavic Proが適している。
 しかし、飛行時間は短いものの、Mavic Airのバッテリーの「軽さ」を天野氏は高く評価する。手に持ってみると、Mavic Airのバッテリー2個でMavic Proのバッテリー1個ほどの重さになる。そのため、4個のバッテリーを持ち歩いても、Mavic Airならば重くは感じない。さらに、折りたたんだ形状のコンパクトさや、強度の増したプロペラガードにケーブルの配線が工夫された電源システムなど、アクセサリ類の充実度も高い。
 今回のレビューは、DJI ARENAの屋内での飛行だったので、残念ながら新たに装備されたアステロイドやブーメランなどのクイックショットを試すことはできなかった。それでも、ホバリングの精度や基本的な飛行の安定性は体験できた。入門機としては充分な性能を備えている。自由に飛ばせる環境が身近にあるならば、手に入れたい一台だ。

今回、クイックショットを確かめられなかったが、今後はカメラ性能などもレビューしたい。

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