原爆死没者名簿に体験者も 長崎市、登載基準見直し

 長崎市は30日、8月9日の平和祈念式典で奉安する原爆死没者名簿の登載基準を見直し、爆心地から半径12キロ以内の被爆地域外で原爆に遭った「被爆体験者」らを2月から対象に加えると発表した。過去の死没者も遺族の申請があれば対象とする。これまでは被爆者援護法に基づく「被爆者」に限定していた。

 市は1968年8月から名簿を奉安。現在は、同法が定める被爆者か審査し、過去の資料も調べて登載の可否を判断している。一方、広島市は原爆に遭った死没者が被爆者健康手帳所持者でなくても申請があれば登載。両被爆地で格差があった。

 長崎市は、被爆体験者ら第二種健康診断受診者証所持者、被爆者健康手帳交付に至っていない第一種健康診断受診者証所持者に加え、爆心地から半径12キロ以内で原爆に遭ったけれど手帳や受診者証を取得しなかった死没者も、遺族が当時の状況を申請すれば原則登載する。

 基準見直しは、同市に手帳交付を求め係争中に死去した男性の遺族が昨年2月に名簿登載を申請したが、市が「被爆者と見なせない」と拒否したため、平和団体が要請していた。田上富久市長は会見で「審査は広島と同様とし、対象を広げる」などと説明した。

 市によると、県内に暮らす被爆体験者は昨年末で6254人。昨年8月9日時点の原爆死没者名簿登載総数は17万5743人。

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