2月

 2月の別称「如月(きさらぎ)」の由来には幾つかの説があるようだ。広く知られるのは〈寒さで衣を更に重ねて着る〉の「衣更着・着更着」だろう。きょうから2月。天気予報にはまだまだ雪のマーク。さすがは有力説▲〈木の葉も/電線も/公園のブランコも/みな息をひそめて/目をとじている白い朝〉と始まる詩を見つけた。北九州市生まれの児童文学者、故みずかみかずよさんの「二月の雪」▲しんと静まった寒い2月の朝、みずかみさんは、山あいの貯水池で羽を休める白鳥たちを見つける。北へ帰る旅立ちの日が近い。〈白鳥よ/北へかえるときがきた/つばさひろげてまいあがれ/-さあ〉▲静かに始まった詩は、やがて熱を帯び〈ひかる風にまむかって/北へ/北へ/二月の雪は旅立ちの帽子〉と結ばれる。雪交じりの風を突いて、翼を広げて飛んでゆけ▲白鳥たちに送る詩人のエールはどこか、試練に挑む若者への声援にも聞こえる。受験シーズンも大詰め。国公立大の志望者は2次試験の出願を終え、いよいよ総仕上げの時期だ。どうか悔いのない準備を▲冒頭に紹介し損ねた異説の数々を最後に。草木の芽が張り出す月だから「草張り月」、気候が陽気になる時期だから「気更来」「息更来」。春は、すぐそこまで来ている。冷たい風に向かって。高く。(智)

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