経済制裁の深刻な影響下でもたくましく生き残る北朝鮮商人

国際社会による対北朝鮮制裁の効果を巡っては様々な見方が存在するが、一部では深刻な影響が出ているようだ。

中朝国境の都市・新義州(シニジュ)のデイリーNK内部情報筋によると、中国から商品が入荷しなくなったため、市内の商店の3〜4割が閉店に追い込まれた。ある縫製工場は、原材料を確保できなくなり昨年末から稼働を中止した。

商人たちは対策の立てようがないと嘆いているが、当局は救済策を取るどころか、中国製品の販売を禁止し、市場で取り締まりを行っている。新たに商品は入荷しない上に、手元にある商品を売ろうとすれば取り締まりに遭う。八方ふさがりとなった商人の間では当局に対する不満が渦巻いている。

一方で、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝える現地の商人の雰囲気は新義州とは大きく異なる。

「市場になんか行かなくたっていくらでも商売できる。自力更生は我々の命だ」(現地の商人)

商人たちは、市場に行かず自宅で商売することで取り締まりを逃れている。このような営業形態は売台(ワゴン)家と呼ばれている。町の人々は、町内の誰がどんな商売をしているか知っているため、売台家を訪ねて買い物をするという。氷点下35度の厳しい寒さが続いていることもあり、寒い青空市場より暖かい屋内で商売するほうがよっぽど楽だ。

しかし、当局はこのような売台家を目の敵にしている。未登録営業であるため、市場の使用料収入が減るからだ。

北朝鮮で安全に商売するには、市場使用料を支払って市場の売台(ワゴン)を借りて営業する方法と、店舗、道端のプレハブなどに国の機関、国営企業などの名義を掲げて営業する方法の2種類がある。

後者について説明すると、利益の1割から3割を事実上の税金として納めることを条件に、各市の人民委員会(市役所)の商業部から「商業管理所所属」という看板を掲げる許可を得て営業を行うというものだ。一見して国営に見えるが、実体は個人経営という一種の名義貸しだ。

この「税金」を支払おうとしない店主に対しては、営業中止や設備没収などの制裁が加えられる。しかし情報筋によると、最初の数ヶ月は上納金を払って、軌道に乗れば逆に「赤字だからカネはない」と主張して「脱税」するのが当たり前になっているようだ。

売台家は、このようなシステムから外れた形態であるため、取り締まりの対象となるというわけだ。

それでも、取り締まりをやり過ごす方法はいくらでもある。

役人が取り締まりに来ても、ワイロを掴ませて黙らせる方法がある。看板を掲げていないから「商売なんかしていない」とシラを切り通すこともあるという。取り締まりが始まれば、携帯電話を使った連絡網で情報があっという間に拡散するため、取締官が現場に踏み込んだときには、商品はすべて消えている。

役人も、あまり強硬な姿勢を取ると商人から報復されかねず、ワイロという貴重な現金収入も途絶えてしまうため、手心を加えるのが当たり前になっている。

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