新生児の赤ちゃんの避難はトートバックで! 避難に使える子育てバックも

お母さんにだっこされる生後2日目の赤ちゃん(画像:Photo AC)

以前、赤ちゃんや、高齢者、怪我をした人をさらしのだっこやおんぶで避難する方法を説明しました。

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今回は、新生児の赤ちゃんの避難方法についてです。新生児の首が座っていない赤ちゃんも、慣れている人はさらしでだっこできます。でも、新生児を初めて見る新米のパパやママにとっては、そうそううまくはいかないものなのです。

そもそも、身近で新生児に接したことがある人は少ないのです。感染の危険もあるので、新生児の赤ちゃんは産院から家に直接向かいます。一般の生活圏には出現しません。レアポケモンよりレアなのです。

だから、物心ついたときから新生児を見たことがないという人は多いのです。みなさんはどうですか?3ヶ月未満の赤ちゃん、最近だっこしましたか?経験が少ないため、抱っこしようとしても、どうしていいかわからないという方も多いのです。もちろん産院などでレクチャーはあるわけですが、3ヶ月くらいまで首が座っていないのですよ。

だっこしたら、くびがグラグラ!さらに、激しく揺さぶってしまうことにより、6ヶ月未満の赤ちゃんが脳障害を負う「ゆさぶされっこ症候群」も有名です。だから、一瞬たりとも揺れてはいけないのではないかと、フォークリフトの様な動きでしか赤ちゃんをだっこできない方もいるとか・・・・。

フォークリフトみたいなだっこしかできない大人が増えている?!(画像:Photo AC)

そんな新生児をはじめて家に迎えた方が災害にあったら、それはもう大変です。はじめての外出は、1ヶ月検診と言われる産後最初の検診であることが多いのです。それまでは外出しない生活です。全く外出したことがなくても、津波、火事、土砂災害から避難しなければいけないのです。ご家族だけじゃなく、地域のみなさんも安全にどう連れて逃げるかアドバイスできる方は少ないかと思います。

そこで、2010年から一緒に講演をしている NPO法人だっことおんぶの研究所 では新生児連れはトートバックによる避難をおすすめしていました。

(画像:fricker)

横長で、頑丈なトートバックの底に、おむつや着替えをいれておいて底上げします。次に、赤ちゃん用のおくるみ(アフガン)で赤ちゃんをくるみます。くるむのは必須ではないのですが、赤ちゃんはまだ手足を自由に動かせないので、走ったりすると、手足がふにゃふにゃばらばらに動いてしまうのです。日常でもくるまれたりしていますから、いつものようにくるんであげます。モスリン素材などの柔らかくてふんわり生地が人気です。

で、さきほどの底上げしたバックの上に赤ちゃんを乗せます。トートバックを肩にかけたとき、赤ちゃんが前方、つまり赤ちゃんの顔が見えるようにして、状況を確認しながら逃げるようにします。そうすれば赤ちゃんにとって安全な形で逃げる事ができます。

ただ、赤ちゃんが生まれた後に、「そうだ防災も大切!」って思っても、あまりに日常が急変してしまうため防災グッズまで手がつけられないのが実情です。ドラマに出てくる赤ちゃんは、おとなしくベビーベットですやすや寝ていて、おしゃれなパパやママが穏やかにあやしているかもしれません。しかし、実際は親子ともども寝不足で、髪はぼさぼさ・・。それだけでなく、今やこどもが生まれたら、いや生まれる前からすぐ保活の毎日なんですよ!防災なんてやってられるわけがない・・・あ。それは、本題ではないので、置いておいて・・。

ともあれ、生まれたらいっぱいいっぱいの生活が待っているので、トートバックという簡単で身近にありそうなものでも、避難道具としてジャストサイズのものは意外と持っていなかったという実情もありました。なにより、普段から使っていないものは焦りもうまれる災害時には使えません。

そんな折、だっことおんぶの研究所は、病院からの依頼で安全に避難できるトートバックを製品化できないかと相談を受けます。

市販のトートバックには足りない、普段から赤ちゃん道具として使え、それであるがゆえに、避難生活も円滑にするトートバックとして開発されたのがこちら!

「避難にも使える子育てバック」(画像提供:NPO法人だっことおんぶの研究所)

(画像提供:NPO法人だっことおんぶの研究所)

まず、カバンの底に赤ちゃんの生活道具、着替えやオムツをいれておきます。普段は、赤ちゃんのお世話道具いれとして使います。

(画像提供:NPO法人だっことおんぶの研究所)

その上に赤ちゃんを乗せます。赤ちゃん、かわいい!!

(画像提供:NPO法人だっことおんぶの研究所)

赤ちゃんの上部を念のため、紐でしばります。バックの中で赤ちゃんの揺れを防ぎます。このまま手で持つこともできます。そして、こちらに注目してほしいのです。

下のストラップの中に手が入り、固定しやすいことに注目!(画像提供:NPO法人だっことおんぶの研究所)

素早く移動するためには、カバンが揺れないこと、重心を上にあげることが重要だと説明してきました。トートバックの欠点は揺れてしまうことにあります。

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わたしの意見も反映してくださって、揺れないことにこだわっていただきました。底にあるベルトは、上下の縫い目がなく、手をいれることができます。その部分に手を通して、カバンの底を持っていただくことで揺れをおさえることができます。だから、重く感じず、赤ちゃんを揺らさず素早く逃げられるトートバックになっています♪

また普段使いで家の中の作業用とするときには、もう少しコンパクトな方が使いやすかったりします。なので、大きさが変えられるようになっています。

普段使い用に上部を折り曲げたところ(画像提供:NPO法人だっことおんぶの研究所)

移動用に上部をあげて立てた状態(後ろ)(画像提供:NPO法人だっことおんぶの研究所)

そして、こちら。

(画像提供:NPO法人だっことおんぶの研究所)

底が2気室になってアウトドアバック風です♪赤ちゃんとは別に保管したいものなど入れて置くことができます。

また、この底の部分にオムツ替えシート兼用断熱シートをいれていただければ、このまま避難所で赤ちゃんを寝かせても寒くないベットになります。さらにまわりを段ボールで囲えば、冷気を十分に防げます。

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(画像提供:NPO法人だっことおんぶの研究所)

こちらの写真では移動中の赤ちゃんの頭を守るために衝撃吸収材として、タオルが入っています。普段はここにオムツ替えシート兼用断熱シートを入れても、もともと断熱材は(ぷちぷちもそう)衝撃吸収材なので、おすすめです。

(画像提供:NPO法人だっことおんぶの研究所)

さらに、赤ちゃんの避難の時に持っていてほしいのは母子手帳です。赤ちゃんが生まれる前から出産時の状況その他、医療情報が細かく書かれています。支援する医師や助産師さんはこの情報を重視して赤ちゃんの様子を見ます。ですので、赤ちゃんの避難カバンにいれておいてほしいのです。ポケットがたくさんあるので、母子手帳以外にもいろいろ入れられます。

(画像提供:NPO法人だっことおんぶの研究所)

また、夜間の避難も想定してますので、リフレクター(反射板)もついています。

開発者のNPO法人だっことおんぶの研究所所長の園田正世さんも、普段使いする予定とのことで、子育てバックとして使える工夫がこらされています。

ということで、自分もちょっとだけアドバイスしたからって、まるでステマ?と思われそうな内容でもありますが、とにかく、新生児の赤ちゃんと親がどうしたら円滑に安全に無理なく避難できるか、ずっと「だっことおんぶの研究所」と一緒に訴え続けてきたことでもあるのです。製品を使うにしろ、使わないにしろ、新生児とその親に関心を持っていただければそれだけでも本当に嬉しいです。

名称:避難にも使える子育てバッグ 定価:1万1000円(+消費税)
 特徴: 
・首がすわらない時期の乳児避難にも使える 
・避難生活ですぐに使いたい育児用品と一緒に運べる 
・普段は普通サイズバッグ、いざというときには大容量にアップ 
・持ち運んでも揺れない工夫がいっぱい 
・衝突の衝撃を弱めるクッションを入れる場所 
・2気室構造で中身を分けられる 
・夜間でも安心の反射板 
・カードを入れたり、情報がさっと見られる内側透明ポケット 
・実用新案出願済み 
・お問い合わせ先 NPO法人だっことおんぶの研究所 info@babywearinlabo.com 

そして、新生児が身近にいない方であってもこのようなトートバックを持って避難している方を見かけたら、赤ちゃんが入っているかもと推測していただきたいのです。

わからないと、焦るあまりカバンにぶつかる方もいるかもしれません。でも、わかっていると、赤ちゃんがいるのねと声をかけたり、他の荷物を持ってあげたり、上のお子さんが避難できるようお手伝いができるかと思います。

新生児の赤ちゃんとの避難は本当に心細いことだと思います。ひとりで赤ちゃんは守れません。地域のみなさまのご協力、よろしくお願いいたします。

(了)

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