東南アジアの訪日観光客に照準 神奈川県、ハラルビジネス支援強化

 増加傾向にある東南アジア圏からの訪日観光客をターゲットに、県はイスラム教の戒律に沿った「ハラルビジネス」への支援を進めている。インバウンド需要の一層の拡大が見込まれるものの、一般の観光施設、飲食店などでは対応に苦慮する例もあるのが現状。慶応大と連携し、もてなしを学ぶ研修会を充実させる一方、ムスリム(イスラム教徒)向けの飲食店ガイドも提供し、双方の敷居を下げて誘客の旗振り役を担う考えだ。

 県国際観光課によると、伸びが顕著なのがマレーシア、インドネシアからの訪日客だ。2017年の推計値はそれぞれ43万9500人、35万2200人を数え、いずれも5年間で20万人以上増えている。

 このうち県内を訪れる観光客は、同じく17年の推計でマレーシアからは2万3456人でほぼ横ばいなものの、イスラム教徒が約9割を占めるインドネシアからは前年比約1万人増の3万7645人。人口増が続き、経済成長の最中にある同国からの流入は今後も拡大が見込まれる。

 「ハラルビジネス」を巡っては、民間団体が教義で摂取を禁じられた豚肉やアルコールなどの混入の有無を保証する制度を整え、対応メニューを提供する店舗も広がるが、「どう対応していいか分からないという飲食店もまだ多く、観光客の側でも中に何が入っているか分からないのでコンビニで済ましてしまう人もいる」(同課)という。

 こうした声を受け、県は慶大イスラーム研究・ラボと連携して15年度から、宿泊施設や飲食店、土産店など県内の観光事業者に向けた研修会を開いてきた。

 「ムスリムの習慣、考え方から多くを教えてもらった。厳密にしていくのはハードルが高いと考えていたが、そうではないと分かった」と話すのは横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(横浜市西区)を運営する相鉄ホテルの廣瀬佳恵マーケティング部長だ。

 特に食事面で対応が求められるケースが増加しているといい、昨年9月の研修会に参加後、独自に慶大から講師を招いて社内研修会を開催。調理、仕入れの担当者を中心に受け入れ態勢の整備につなげ「ハードルは下がった」という。

 今年は新たにインドネシアの若者文化や流行に詳しい専門家を講師に招き、訪日観光客の動向やニーズについて解説。さらに、国や宗派などによっても戒律の厳しさが異なることを踏まえ個別相談の時間も設けた。

 県の担当者は「食事のほかにも日々の礼拝などについても伝える。互いに安心して過ごしてもらうことで観光客の増加につなげたい」としている。

 次回の研修会は13日午後1時半から横浜市中区の神奈川中小企業センタービルで開かれる。参加無料。問い合わせは、同課電話045(285)0812。

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