「機内にお医者様はいらっしゃいますか?」で実際に起こっていること

機内で急病人が出てしまったら

CAは救急救命の訓練をしっかりと受け、フライトの際は必ず救命救急の証明書を携帯しています。

うっかりでも証明書を忘れてしまうと、乗務できません。

また、1年毎に、筆記と実技の試験を受け、更新が必要です。

また、フライト前のブリーフィング(ミーティング)では、毎回、口頭での質疑応答があり、答えられない場合は乗務することができなくなります。

救急救命に十分な知識は十分もっているので、あまり深刻ではない場合は、CAで対処することができます。

と言っても、やはり心配なシチュエーションの時、判断に迷う時は、プロフェッショナルな方にお手伝いしていただいた方が安心。

安心なのはCAだけでなく、救護を必要としているお客さまも、きっとお医者さまの方が安心ですよね。

とは言え、アナウンスをすることによって、お休み中のお客さまの邪魔をしてしまいます。

また、お客さまの中から申し出て下さるお医者さまは、搭乗券を購入してくださっているお客さま。

簡単な判断で、CAの業務をお手伝いしていただくわけにもいかないのが現実です。

その判断は客室責任者、または機長が緊急着陸も視野に入れて判断し、行います。

今回は実際にCAが体験したエピソードをご紹介します。

 

そもそもお医者さまはいるの?

アナウンスをした場合、筆者や筆者の周りの友人CAの場合ですが、100%お医者さまが搭乗していらっしゃいました。

また、筆者の勤めていた航空会社では、アナウンスの際、「お医者さま」という表現を使うことは禁じられていて、「医療従事者」と表現するようになっています。

患者さんの症状はアナウンスしないので、獣医さんや歯医者さん、皮膚科の先生などがお申し出くださることも。

お申し出いただいた際は、必ず客室責任者が免許を確認させていただき、実際にお手伝いしていただくかどうかを判断します。

 

 

念入りなストレッチ?

実際に、筆者が体験した急病人のリアルエピソードをご紹介いたします。

お食事、温かいお飲み物のサービスが終わり、機内の照明を落とすと、お客さまはお休みになる準備をされます。

お休みされないお客さまはギャレー(飛行機の台所)に遊びにいらっしゃる方も。

その日も、機内の照明を落として、CAは順番で食事タイム。

食事が後のCAはお手洗いの様子、ギャレーにいらっしゃったお客さまの対応、次のサービスの準備など、忙しく動いていました。

お休み前に用を済ませたいお客さま、歯磨きされたいお客さまなどで、お手洗い前には長蛇の列が。

大変ですがお待ちいただくしかありません。

列の3番目のお客さまが、ストレッチをしながら並んでいらっしゃったのは視界に入っていました。

アキレス腱を伸ばしながら体を前後に大きく揺らしているなと思った瞬間後ろに転倒!

意識を失っていらっしゃいました。

あと数センチずれていたら、ひじ掛けかお手洗いの壁に頭を強打していた可能性が。

外傷は見られませんでしたが、念のためお医者さまにお願いしました。

貧血になり、一時的に意識を失っていただけで、こぶはできてしまいましたが大事には至りませんでした。

 

旅の疲れで熟睡?

深夜便での出来事です。

30分ごとのドリンクサービスも滞りなく進み、次のお食事の準備も順調。

CAにとって、少しゆっくりできる時間です。

そんな時、真っ暗な機内で何度も何度もコールベルが。

急いで駆けつけると、一見ぐっすり眠っていらっしゃるお客さま。

お隣のお連れのお客さまが、何度話しかけても目を覚まさないのに気がついてコールベルを鳴らしてくださったのでした。

息はしているのが確認できたので少しホッとしましたが、吐しゃ物が喉に詰まってしまったり、他の病気が考えられたりもしたので、念のためお医者さまをお願いしました。

こちらも貧血で意識を失っていらっしゃったようで、事なきを得ました。

 

まさかのCAが?

エコノミークラスに乗務していた後輩CAが、着陸まであと数時間というとき、背中の痛みを訴えて動けなくなってしまいました。

痛みで顔は真っ青。

冷や汗も出ていて、息をするのも苦しそうな様子。

これはCAの職業病とでも呼べる症状、尿路結石です。

忙しくてお水を飲む時間が取れなかったり、お手洗いを我慢してしまったりすることが原因です。

少しでも痛みが緩和できればと、痛み止めを服用させたり工夫しましたが、念のためお医者さまにお願いしました。 

 

 

いかがですか?

CAもお客様の体調の変化にはとても敏感で、すぐに対応できるように訓練されています。

しかし、機内にいらっしゃるお医者様の存在はとても心強いもの。

お客様としてお乗りいただいている以上、お申し出いただくのは心苦しいのですが、お医者様との連携があって機内で救われている命もたくさんあります。

機内でお医者様がいらっしゃるかのアナウンスが流れているのを聞いた時は、ぜひこのことを思い出していただけると嬉しいです。

 

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