助け合う心、マークに 「協力必要な時は声掛けて」 大学生2人が考案

 協力が必要な時は、お声掛けを−。そんな気持ちを表すマークを大学生2人が考案した。目指したのは、お年寄りや障害者らに限らず、困っている人が気軽に周囲に助けを求められる仕組みづくり。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」が掲げる「誰一人取り残さない」世界の実現に向け、2人は「いずれマークが必要なくなるぐらい、人に優しい社会を築ければ」と意気込んでいる。

  マークを考えたのは、小田原市出身の飯山智史さん(22)と、横浜市青葉区出身の町田紘太さん(25)。どちらも東京大学に通う3年生だ。

 手助けする意思を示すマークとして、缶バッジやステッカーなどを作製。かばんや服など目立ちやすいところに付け、声を掛けられたら協力するという仕組みだ。

 ただ「絶対に助けなければいけないわけではない」ともしている。自分で解決できないことは警察官や駅員、英語が堪能な人を探すなど、できる範囲で構わない。時間がないときはマークを付けた別の人に頼むことも可能だ。あくまでも手伝いたい、手伝ってほしい、という気持ちのマッチングを大切にしている。

 「今の社会は、人にあまり優しくないのでは」。そう考えるきっかけがそれぞれにあった。

 飯山さんはアルバイト仲間の女性との出会いだ。20代の女性は体が弱く、職場に向かう電車内で「マタニティーマーク」を付けている。はた目からは健康的に見えるため、優先席に座りにくく、席を譲ってもらえるよう頼みづらいのが理由とも聞いた。

 「障害や病気がある若者もいれば、元気なお年寄りもいる。本当は年齢や障害、病気といった属性を取り払って助け合わなければいけないのに」。飯山さんはそう指摘する。

 町田さんは自身の経験からだ。入学後、大学の授業についていけず、「うつに近い状態」に。休学と復学を繰り返した。気持ちに波があり、全体的に疲れやすかった。町田さんは「車内やホームで『座ってもいいですか?』とコミュニケーションを取るきっかけがあったら、と思っていた」と当時を振り返る。

 マタニティーマーク、ヘルプマーク…。いま世の中に広まるのは、弱者が自らの立場を示した上で、協力を求めるものが主だ。ただ障害や心の病を教えたくない人もいれば、立場を明確にしたことでかえって妊婦らが不利な扱いを受ける「マタニティーハラスメント」に遭うこともある。

 心臓や精神疾患など、外見からは判断できない病気だってある。困っている人が声を掛けるのに「親切そう」というあやふやな印象で選んでいることが多い一方で、手伝いたくても躊躇(ちゅうちょ)してしまう人もいる。

 こうしたさまざまな「ずれ」を埋めるため、2人が慕う元国連職員の教授らとたどり着いたのが、当事者でなく、協力者自らがその気持ちを表すという仕組みだった。

 マークには、2人の思いを込めた。貧困や飢餓の撲滅など17分野で定めているSDGsの目標の一つ、「人や国の不平等をなくそう」のテーマ色であるマゼンタピンクをあしらった。

 世界65の国や地域の国旗に用いられ、国や文化を超えて親しまれる形である星を中央に配し、それをSDGsの目標と同じ数の十七角形で取り囲んだ。若い世代にも受け入れられるよう、ファッション感覚も重視した。

 飯山さんはこう断言する。「助けたいという気持ちがあり、困っている人のニーズが分かれば、助けてあげられることがほとんど。誰もが生きやすい社会をつくるには、周囲の一人一人が優しくなるしかない」 マークの缶バッジなどは500円で販売。購入希望者はempowersdg10@gmail.comまでメールする。

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