“松坂効果”は打にも現れるか? リーグワーストだった中日投手陣の打撃

打撃面でも中日に変化をもたらすことが期待される松坂大輔【写真:荒川祐史】

第1クールに松坂は志願の打撃練習

 2月1日、球春が到来し、12球団が一斉にキャンプインした。各球団の中でも注目度が高いのは沖縄・北谷町の北谷公園野球場でキャンプを張る中日ドラゴンズ。松坂大輔投手がテストの末に入団したことで、第1クールは連日多くのファン、メディアが、そのキャンプ地を訪れた。

 中日のキャンプは5日が第1クール最終日となり、6日はようやくキャンプ最初のオフとなる。その第1クールの松坂は2日目に初めてブルペン入りすると、室内練習場での打撃練習も敢行。マシンを相手に約100スイングを振り込んだ。3日目には山井大介投手、吉見一起投手、大野雄大投手とともにランチ特打を行い、2本の柵越えを放って、ファンを沸かせていた。

「1点、2点負けていても1打席で、もしかしたら負けを消すかもしれないし、勝ちになる可能性もあるってこと。1シーズン投げていても1本も打たなかたった奴が7勝、8勝だったら、2本、3本打てば、もう1勝する可能性がある。バッティング練習も、バント練習もそのためにやらせているけど、結果でないのであれば、個人的に出るようにしないといけないよな」。これは、2日に松坂が自ら進んで打撃練習を行ったことを聞いた森繁和監督の言葉である。その森監督の発案で、3日のランチ特打が行われた。

「大野がどう思ってくれるかによって変わるだろう」とも森監督は話し、昨季40打数無安打に終わった大野雄大の名前を出していた。このランチ特打、決してファンサービスではない。大野の名前こそ出したが、指揮官は、チーム内における打撃面への意識の変化を実際に求めているのだろう。

中日の投手打撃成績はリーグワースト打率.062

 というのも、中日投手陣の打撃成績はセ・リーグ6球団で最も低い。チームの投手全体で242打数15安打、打率.062。これはセ・リーグ6球団でワースト。最下位のヤクルトで222打数21安打で打率.095、これにリーグ優勝した広島(.097)、4位の巨人(.104)、2位の阪神(.111)となり、トップは258打数33安打、打率.128のDeNAがリーグトップだ。投手が記録した得点は中日が7、DeNAは15。打点も中日は12だが、DeNAは17(3本塁打のウィーランドが1人で12打点)だ。

 昨季10打席以上に立った投手の中で、大野雄大だけでなく、吉見一起、若松駿太が打率.000。小笠原慎之介が33打数1安打で打率.030、又吉克樹が20打数1安打で打率.050と軒並み投手の中でも低打率だった。チームトップは昨季限りで退団したバルデスの44打数5安打、打率.114。セ6球団でのトップはDeNAのウィーランドで48打数11安打、打率.229。これに、ヤクルトの原樹理(33打数7安打、.212)、巨人の菅野智之(54打数9安打、.167)、阪神の秋山拓巳(48打数8安打、.167)、DeNAの石田健大(36打数6安打、.167)が続く。

 一方で、松坂は投手が打席に立たないパ・リーグの西武、ソフトバンクに在籍。交流戦での成績しかないが、20打数5安打で打率.250をマークしており、2006年の阪神戦では広い甲子園の左中間最深部に届く本塁打を1本放っている。また、メジャーでも37打数7安打、打率.189。日米通じて、57打数12安打、打率.211の成績を残しているのだ。

 中日とDeNAの打率差は6分6厘。この差は間違いなく大きい。テストを受けた際には、森監督から「バッティングを教えてやってくれ」とも言われていた松坂。指揮官の言葉通りに、投手陣がそれぞれ1本でも、2本でも、多く安打を放ち、塁に出られれば、得点力アップに繋がる。投げることが仕事の投手であるが、セ・リーグでは「9番目の打者」となる。松坂の加入により、投手陣のバッティングへの意識、さらには数字が変わる。こんな効果も、期待されているのだ。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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