登録名変更で心機一転 勝負の年を迎える「外れ外れ外れ1位」の今

オリックスの後藤駿太【写真:荒川祐史】

高校時代の異名は「上州のイチロー」

 オリックスの後藤駿太外野手が、プロ入り以来親しまれてきた登録名「駿太」を、今年からフルネームに変更する。結婚を機に「後藤家を背負う」決意の表れだという。キャンプ初日に「GOTOH」のユニホームをお披露目し、その背中を「カッコイイ」と自賛していた。

 駿太改め後藤は、群馬県出身の24歳。前橋商業高校時代は、走攻守揃ったプレースタイルから「上州のイチロー」と異名を取った。2010年ドラフトでオリックスに1位指名を受けるが、実はその前に3度競合して全て抽選を外した結果「外れ外れ外れ1位」の指名。それでも「信じられない。うれしいです。(オリックスは)本当にプレーしたかったチーム」と初々しい笑顔でコメントし、ファンの心をがっちりとつかんだ。

 後藤の魅力は、何といっても驚異的な身体能力だ。180センチ、83キロのたくましい肉体で、足も早ければ肩も強い。相手チームの進塁に対して彼の名前が発揮する抑止力は、全外野手の中でもトップクラスだろう。

 大きな武器である強肩に関して、特に記憶に新しいのは昨年の5月28日の千葉ロッテ戦だ。オリックス1点リードで迎えた9回裏2死2塁、長打で同点、あるいはサヨナラのピンチ。ここで荻野貴司に中前打を浴びるが、中堅を守っていた後藤のレーザービームが炸裂する。本塁に突入した大嶺翔太を、見事なストライク送球で刺し、先発の山岡泰輔にうれしいプロ初勝利をプレゼントした。

同世代にはヤクルト山田、日ハム西川、ホークス千賀

 脚力と強肩を生かした外野守備は堅く、チームメイトからの信頼も厚い。ただ、プロ7年目のシーズンを終えた現時点においても、完全なレギュラー定着に至っていないのは打撃が課題となり続けているからである。キャリアハイは127試合5本塁打、打率.280をマークした2014年。昨年は129試合2本塁打、打率.240という成績であり、如何に名手といえども、外野の一枠としては物足りない数字と言わざるを得ない。

 同じ世代には、実は北海道日本ハムの西川遥輝や福岡ソフトバンクの千賀滉大など、球界を代表する一流選手が並んでいる。特に山田哲人(東京ヤクルト)とは、何かと縁がある。ともに高卒8年目。履正社高校の山田が「甲子園でカッコイイと思った選手」として挙げたのが後藤で、ドラフトで2度抽選を外したオリックスが、後藤より前に1位指名したのも山田だった。

 ポテンシャルは、同世代の彼らに勝るとも劣らない。何より彼はまだまだ若い。身体能力を生かした惚れ惚れするようなプレーに、チームは何度も助けられてきた。

 高卒の生え抜きであるだけに、その身にかかる期待は大きいが、この7年間、目の前に立ちはだかり続けた壁を打ち破り、今年こそレギュラーの座を手にしたい。慣れ親しんだ2文字に別れを告げる登録名変更が、8年目の飛躍のきっかけとなるだろうか。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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