東京・御殿山(品川区)の閑静な住宅街に原美術館はある。現代美術の専門館では草分け的存在。誕生は1979(昭和54)年にさかのぼる。
創設者の原俊夫館長は、横浜正金銀行頭取などを務めた明治・大正期の大実業家、原六郎の曽孫にあたる。自身も企業経営などビジネス畑を歩む一方、海外で現代美術に触れるうち、あらゆる職種の人がアートを愛好しコレクターとなる姿に感銘を受けたという。
やがて「現代美術は人と人をつなぎ、文化と文化を結ぶツールとなる」と確信。アートを介し作家と鑑賞者、収集家らが感性をぶつけ合い、つながり合って、新しい価値観を生み出してゆく。そんな社会を活性化させるアートの役割に気付くも、70年代当時の日本には現代美術館がほとんどなかった。「ならば僕が作ろうと思ったわけです」と振り返る。