被爆マリア像に平和への思い 被爆者 深堀柱さんの遺作絵画展

 昨年12月に亡くなった被爆者でカトリック信者の故深堀柱(あきら)さん(享年87)が描いた水彩画を集めた遺作絵画展「マリア様に囲まれて」が6日、長崎市平和町の浦上キリシタン資料館で始まった。旧浦上天主堂の被爆マリア像を題材に描き、平和への思いを訴えた作品などが並んでいる。

 遺作展は、同資料館が主催。深堀さんが生前、被爆した小さなキリスト像や十字架などを同館に寄贈したことが縁で実現した。平和祈念像や折り鶴などと被爆マリア像を描いた作品や、長崎に原爆が投下された日付「8・9」をモチーフにした作品など49点を展示。世界文化遺産の登録を目指している「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産である中江ノ島(平戸市)なども鮮やかな色彩で表現している。

 深堀さんは、旧制鎮西学院中の4年生だった15歳の時、爆心地から2・8キロの興善町の長崎消防署(当時)で被爆。1990年から2011年まではカトリック長崎大司教区広報委員を務めた。11年には世界各地で核廃絶を訴える非政府組織(NGO)「ピースボート」の船に乗り、被爆体験を語った。

 深堀さんの遺族によると、水彩画は会社を定年退職した90年ごろに始め、亡くなるまで筆を執り続けた。当初は風景画などを描いていたが、ナチス占領下のポーランドで大量虐殺の舞台となったアウシュビッツをピースボートで訪れて以来、被爆マリア像を描くことが増えたという。「イメージをささっと表現する感じで、筆は速かった」と懐かしんだ。

 同館は「深堀さんは浦上の被爆者代表として活動した。深堀さんが描いた被爆マリア像を見て思いを感じてほしい」と呼び掛けている。25日まで。入館無料。月曜休館(月曜祝日の場合は翌日が休館)。

深堀さんが描いた水彩画が並ぶ会場=長崎市、浦上キリシタン資料館

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