やっぱり分からない

 何回聞かされても、勇ましさの要求が過剰に思えてならない。「…大切なことは、命を懸けて日本を守るという誇りだ」と繰り返す安倍晋三首相の“自衛隊観”▲この誇りを支えるため、自衛隊の存在を憲法に明記することが欠かせない…というのが首相得意の論法だ。一昨日の国会でも「命を賭して任務を遂行している者の正当性を明確化することは、わが国の安全の根幹にかかわる」と力説した▲だから「憲法改正の十分な理由になる」のだそうだ。では、その「正当性」は目下「明確」ではないのかというと「自衛隊が合憲であるということは明確な一貫した政府の立場」と言うから話が分かりにくい。ならば改憲の必要はなさそう▲自衛隊施行規則の39条には「服務の宣誓」という規定がある。〈…事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる〉-自衛隊員は皆、こう宣誓した人ばかりだ▲自らの正当性を疑い、首をかしげたままの生半可な覚悟や使命感で「署名押印」などできる書面ではないだろう。現行の憲法の現行の文言の下で隊員たちは心構えを固めて制服に袖を通す。何か不足があるとは思えない▲だが、首相はこのままでは駄目だと主張する。自衛隊に何をさせようというのだろう。真意が気になる。(智)

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