【2018鉄鋼春闘 基幹労連、きょう交渉方針決定】〈和田口具視副委員長に聞く〉「競争力強化へ、人への投資を」 65歳現役社会、労使で議論を

 基幹労連はきょう7日の中央委員会で春季交渉方針を決定する。これを受け鉄鋼の大手労組は9日に要求書を提出。2年分の基本賃金改善(2018年度、19年度各3500円)を要求する方針だ。今春闘では60歳以降の就労問題も大きなテーマとなる。今春闘の取り組み方針、賃金改善要求の背景などを基幹労連の和田口具視副委員長(鉄鋼部門担当)に聞いた。(高田 潤)

――鉄鋼業の足元の経営環境をどうみているのか。

 「日本経済は緩やかな成長を続けており、鉄鋼業も好調な需要と着実なコスト削減の実施により収益改善が鮮明になっている。一方で、原油価格の低迷、あるいは原料・鋼材価格の不安定な動きもあり、業種によっては収益影響に差が生じているのも事実。先行き不透明感が完全に拭えたわけではなく、足元の状況について決して楽観はしていない」

基幹労連・和田口副委員長

 「この状況下で着実な収益改善を達成するには職場の不断の努力が不可欠。鉄鋼の職場は急激な労務構成の変化に直面しつつ、全社員が一体となって技術・技能の伝承に取り組んでいる。さらに鉄鋼各社の現場は今、高操業が続く。その中で働く者のモチベーションを高め、仕事に打ち込める環境を整備することは鉄鋼労使にとって大きな課題だろう」

――基幹労連の今春闘の統一要求で、2年サイクルの14年春闘、16年春闘に続き、賃金改善要求を掲げる。

 「労働組合はかねて、内需の6割を占める個人消費の活性化が必要と主張してきた。月例賃金は生計費の基礎をなしており、生活の安心・安定の源泉と位置付けられている。しかし、社会保障負担の増加などで可処分所得の減少が進行しているのが現状だ。日本経済はいまだ『好循環』軌道に入ったわけではない。政府や日銀の目標通りGDPや消費者物価指標は伸びておらず、このままではデフレ再突入すら懸念される。日本経済を好循環の流れに確実に導くためには、個人消費の活性化が不可欠。そのためには働く者すべてに対し、能力発揮や生産性向上など会社への貢献に報いる要素が強い月例賃金の継続的な上昇が欠かせない。こうした社会状況に加え、鉄鋼をはじめとする基幹労連の加盟組合が一つのまとまりの中で要求できる水準を念頭に賃金改善要求を打ち立てた」

――統一要求では60歳以降の就労問題に関する要求も掲げている。

 「我々の産業は『長期能力蓄積型産業』。技術・技能の伝承の観点や、少子高齢社会による労働力減少という現状を考えると、60歳以降の労働者の役割は極めて重要となる。現行の再雇用制度は、労使間でその時々の課題を克服すべく制度改善を行ってきたが、厚生年金や高齢者雇用継続給付金との併給を前提とした制度設計が出発点となっており、いわば過渡的な制度という位置付けだ。特に再雇用制度では与えられる役割と責任がおのずと限定されるため、能力や役割発揮に向けた環境整備が課題となる。今春闘では、各組織の置かれている状況を相互に理解した上で、産別全体として『65歳現役社会の実現』を目指しスタートを切る。労使検討の期間も十分必要となる。会社に対して要求趣旨を丁寧に説明していきたい」

――18年春闘を通じて、会社側に何を訴えていくのか。

 「今年4月から多くの企業が新たな経営計画をスタートさせることになる。鉄鋼会社にとって将来を担う人的資源の確保・育成・定着は事業運営の根幹に関わる極めて重要な課題で、人材問題を抜きにして経営計画は進められない。このことは労使の共通認識となっているはず。企業の競争力強化と持続的な発展を促進するため、『人への投資』の重要性を鉄鋼すべての経営者に強く訴えていきたい」

© 株式会社鉄鋼新聞社