思い詰まった繭玉を花束に 江迎の就労支援事業所「匠工房」利用者が手作り

 佐世保市江迎町にある障害者の就労継続支援B型事業所「匠工房」は、利用者が手掛けた繭玉を集めた花束「玉束」を作っている。さまざまな「思い」を丸い形に残し咲き続ける“花”。祝い事や仏事用の贈り物として地域の新たな名産となることを目指し、利用者は心を込めて作業に励む。

 繭玉は福を呼ぶ縁起物とされる。江迎町では、軒先に飾って訪れる人を温かく迎え、活性化につなげようと商店街の女性たちが2002年から作り始めた。毎年3~4月の「肥前江迎繭玉まつり」では町中が彩られ、製作体験や町巡りが楽しめる。

 匠工房は13年に開所した。30~70代の28人が利用。まつりの継承に貢献しようと、繭玉作りに取り組んでいる。

 玉束は、職員の松井弘実さん(33)が2年前に発案した。結婚を控えた妹に贈り物を考えていた松井さん。色や柄が異なり、同じものが一つもない繭玉で花束を作れないか、と思い付いた。

 近くの生花店に依頼。ドレスのイメージや式場、妹の雰囲気に思いを巡らせながら造花を合わせ、世界に一つだけの花束が完成した。「見たことがない」と妹に喜ばれ、ブライダル関係者にも驚かれた。試験的に販売すると「手作りの温かみが感じられる」「仏事用も作って」など好評で商品化につながった。

 繭玉は、発泡スチロールの球にデザインを描いてナイフで切り込みを入れ、布を差し込んで仕上げる。利用者は、和気あいあいと会話を楽しみながら、大小さまざまな球に向き合う。

 岡本マチ子さん(63)は「喜んでもらえるかな、と思いながら、色を選んで貼り付けるときが楽しい」とはにかんだ。指導員の宮崎雅幸さん(27)は「教え合うことで交流が深まり、話さなかった人が話すようになったり、穏やかになった人がいたりするなど、利用者にも変化が見られる。多くの人に知ってもらい、それぞれの思いを〝玉束〟で伝えてもらえたら、うれしい」と話した。

 商品はミニブーケ(千円~)や人気の花束(3500円~)、テーブルに飾れるフラワーポット(1500円~)など。色や大きさなど要望に合わせて作る。ひな人形やこいのぼりの飾りなど、利用者のアイデアを形にした商品も並ぶ。問い合わせは「匠工房」(電0956・66・3434)。

花束やミニブーケ、フラワーポットなど要望に合わせて作る「玉束」=佐世保市、匠工房

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