丸の内の地下トンネル「洞道」で設備点検実験 三菱地所、丸の内熱供給など4社がドローンを活用  東京・丸の内の地下で2月6日、地域冷暖房のために蒸気や冷水など熱を供給する配管を通す専用の「洞道(どうどう)」と呼ばれる地下トンネル内を、ドローンが自律航行して点検する実験が報道陣に公開された。現在、すべて人手で行われている点検作業について、ドローンによる効率化や作業分担の可能性を模索することが目的だ。

オフィス集積地の〝空調インフラ〟をドローンで点検できるか

予めCADデータによる3Dマップによって航行コースを設定、機体の360°レーダーと前方と下方のカメラで機体を制御するため、地下洞道の非GPS環境下でもスムーズに飛行したLiberaware社のドローン。150gの小型ドローンだが、飛行時間、カメラの解像度など課題は残している=2月6日、東京都千代田区丸の内1丁目の地下洞道

 実験に参加したのは、三菱地所株式会社、丸の内熱供給株式会社(以下「丸熱」)、ブルーイノベーション株式会社、株式会社Liberaware(リベラウェア)。実験は、オフィス、商業施設、ホテルなどが集積する丸の内の地下で行われた。
 実験の舞台は、「洞道」と呼ばれる地下トンネル。オフィス、ホテル、商業施設が密集する丸の内、大手町、有楽町エリアの冷暖房を担うため、冷凍機で冷やした冷水を通す管や、ボイラーで作られた蒸気が通る管の専用エリアとして、このエリアの地下にはりめぐらされていている、一般の人が立ち入らない、都市空調の基幹インフラだ。
 この日の実験会場となった洞道は、直径2・6メートル。ドローンを飛ばすことで、洞道内や、そこを通る配管、付帯設備の異常の有無を確認する作業ができるかどうかを確かめる。
 洞道でのフライトには、人手で操作をしない自律航行が出来ること、非GPS環境下であること、洞道内に配管が走っているため飛行エリアが狭いこと(この日の環境では幅60センチ)など、いくつかの制約をクリアすることが求められる。
 実験機にはLiberaware製の、幅15センチ、長さ20センチ、厚み4センチの4つの回転翼を持つ小型機が選ばれた。障害物を検知しながら非GPS環境下で自律航行できることが特徴だ。小型カメラも搭載し映像の撮影も可能だ。

機体は狭い空間を自動でゆっくりまっすぐ

 実験の公開は、洞道の入り口にあたる部分で行われた。集まった報道陣はそこから中をのぞきこむ。
 洞道にはあらかじめドローンが設置されてある。シナリオでは、オペレーターがドローンを起動させると、1メートルほど浮上し、そこから直線に伸びる洞道を25メートルほど前進する。その間、洞道内部やそこを通る配管を確認し、再び元の位置まで戻ってくる。自動航行のため、あらかじめドローンの動きはプログラムされていて、オペレーターの作業はオン、オフだけだ。
 実験が始まった。
 オペレーターが「起動させます」と声をかけると、まもなくドローンの回転翼がまわり、ゆっくりとドローンは浮上した。浮上すると、今度はゆっくりと前進。機体は左右に揺れはするが、左右の配管に衝突はしない。60センチしかない狭い隙間をぬうように自動でゆっくり、まっすぐと進み、この日の目的地である25メートル向こうまでたどりついた。帰路もあぶなげなくフライトし、機体はスタート地点にもどって着陸した。この間ほぼ2~3分だ。
 この日は搭載したカメラで撮影した映像をリアルタイムで中継することはしなかったが、この機体は機能としても、それも可能だという。
 Liberaware代表取締役の閔弘圭氏は「機体は狭小、閉鎖空間で役立つことを目指して開発しました」と話している。機体の正面方向と飛行中の機体真下はカメラでチェックしているほか、搭載したレーザーで機体周辺360度に障害物の有無などを確認しているという。同社は昨年11月に行われたPwCコンサルティング主催のマッチングコンテストで、ソリューションを募集した東京メトロ株式会社のハートを射止めた実績もある。
(Liberaware関連記事:https://www.dronetimes.jp/articles/2268

小型ドローンのモックアップ。小型で軽量、狭小なエリアでの飛行にに向いている。

現状は2人1組の人手による巡視点検 「体力的にきつい作業」の効率化を、ドローンで

 洞道の点検は現在は、人手頼みだ。丸熱の古田島雄太執行役員によると、プラント管理や維持を担うエンジニアが担う業務のひとつとして洞道の点検が含まれているという。作業は2人1組。「巡視」なので早くても「ゆっくりした散歩の速度」になる。洞道内の空間には空調がされておらず、熱供給の配管が通っていることもあり「場所によっては気温40度ほどになることもある」という。しかもそもそも歩くためいできたトンネルではないので、狭い。「体力的にはきつい作業です」という。
 管理している温熱、冷熱を供給するための配管の総延長は約28キロ。これを通すための洞道は「2けた。10キロ強になる」(野村修一人事総務部長)という。さらに「もっと狭いところもあれば、段差ができているところもある」(古田島執行役員)ものを、現在2か月に一度、点検をし、漏洩、腐食、破損、漏水、変形などの有無を確認し、地域の快適な生活を支えている。作業の効率化、人手頼みの作業の分担ができれば、エンジニアの労働環境改善になるうえ、さらい生産的な業務で活躍する機会も生まれそうだ。
 実験をした三菱地所は「こうした実験を通じて課題の抽出につなげたい。これからも実験には積極的に参加していく」と表明した。ブルーイノベーションの熊田貴之社長「点検は、事業概要で掲げている5大領域のひとつで大きな柱。これからも実験を進めていく」と、1月に発表したばかり同社のプラットフォームBEP(ブルーアースプラットフォーム)を示しながら、抱負を語った。
(ブルーイノベーション関連記事:https://www.dronetimes.jp/articles/2496

© 株式会社産業経済新聞社