もう一度走る<<16>>/Yasuko Marue

鳴かない猫

新しい年になると気持ちも前向きになりました。

ラン君を見ているだけで勇気と希望を持てました。

ふみふみをするようになっても

まだラン君の鳴き声を聞くことはありませんでした。

猫だから鳴くのは当たり前だと思っている方が多いと思います。

でも、ラン君は鳴きません。

保護した頃と比べると意思の疎通もできるようになったと思います。

でも

先生から言われた

“外で暮らしてきて要求鳴きする必要がなかったんでしょうね”という言葉が思い出されました。

家猫だったら

“お腹が空いたよ”

“寂しかったよ”

“遊んで”

など、鳴くことで訴えると思います。

でも、ラン君は3年余り鳴かずにいたわけです。

要求する相手がいなかったと思うと心が痛みました。

そして

ついに

その日が来ました!

1月10日 

ラン君が鳴いた!

ラン君のケージの前に行くと

か細い声で

“ミャー”という声が聞こえました。

えっ?

今の声は?

他のケージを見ても猫ちゃんはいませんでした。

“い、今の声、ラン君?!”

“もう一度鳴いて!”

お願いしましたが

鳴いてくれませんでした。

ラン君に出逢って4ヶ月が過ぎて初めて聞いた鳴き声。

遠慮がちに鳴く声は子猫のように可愛くて優しい声でした。

またラン君との距離が近くなったと感じました。

次はどんなことが起こるのでしょう?

に続く

著者:Yasuko Marue (from STORYS.JP)

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