『ゴジラ』特撮美術監督のアトリエ 解体前に「展示会」実施  海老名市

取り壊される「アルファ企画」

 ゴジラシリーズを支えた海老名ゆかりの特撮映画美術監督 故・井上泰幸氏と、その妻で彫刻家の玲子氏のアトリエ「アルファ企画」(上今泉4の4の37)が今月15日に取り壊されるのに伴い、2月2日〜4日の3日間限定でその内部と夫妻ゆかりの品々が公開された。会場には夫妻と交流のあった人や、日頃建物の前を通りつつもアトリエの存在を知らなかった人など多数の近隣住民らが訪れた。

 井上泰幸氏(1922―2012年)は映画『ゴジラ』(1954年)以来、美術担当として円谷英二監督らの特撮作品に携わり、怪獣のデザインや絵コンテを手掛けるなど、東宝特撮映画の黄金期を支えた人物。東宝退職後に構えたのがアトリエ「アルファ企画」だ。この場所で『日本沈没』など日本の特撮映画を代表する作品のセットが制作されてきた。

 今回の催し・アルファ企画解体復活大作戦は、幼い頃から井上氏と親交のあったアトリエ隣の常泉院・松樹俊弘住職から建物解体の話を聞いた東京藝術大学出身の安田葉さん、中村奈緒子さん、川村喜一さんと、特撮ファンの田邉剛士さんの4人が、「ご夫妻の思いを多くの人が共有して思い出に残してもらえたら」と企画したもの。遺族の東郷登代美さんの了解を得て、1年ほど前から地域ボランティア10人とともに膨大な数の夫妻の美術作品や写真の整理を行ってきた。

 企画展では、夫妻の思い出写真や美術作品がアーティスティックに配置されたほか、解体後には見ることのできない床に残されたペンキ跡など歴史を感じられる展示がなされた。中でも目玉となったのは、井上氏らが手掛けた「ガレー船」。長年放置されていたが、近隣に住む技術者・高木明法氏が修復し蘇らせた。また当日は、企画者の4人が同アトリエで「アルファ企画の思い出」をテーマに制作した5分間の映像も上映された。

 企画した安田さんは「ご夫妻にお会いしたことはないけれど、作る苦しみも楽しみもわかるのでお二人の思いに共感を覚えました。解体前の最後の機会に近隣の皆様に見ていただけてよかったです」と話した。

 夫妻の作品は企画展後、一旦倉庫に保管される予定だが、その後の行き先はまだ決まっていない。
 

アルファ企画の高い技術が結集した「ガレー船」

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