【三菱マテ子会社の「不適合品出荷問題」会見の一問一答】不正品出荷先、約750社に拡大 「120拠点の臨時監査で膿出し切る」

 三菱マテリアルは8日、グループ会社による検査データ不正問題で三菱伸銅(伸銅社)、三菱電線工業(電線社)の2社に加えて、アルミ板箔・押出製品を製造する三菱アルミニウム(アルミ社)とアルミ押出事業を手掛ける立花金属工業、自動車用機械部品を製造するダイヤメットの3社で不正が見つかったと発表した。同日、三菱マテリアルの竹内章社長、小野直樹副社長、鶴巻二三男常務(加工事業カンパニープレジデント)、三菱アルミニウムの浜地昭男社長の4氏が記者会見した。主なやりとりは次の通り。

――問題が発覚した3社では、これまでの不正案件にあったような社内特採のリストのようなものがあったのか。

小野「アルミ社で2016年11月に発覚し、すでに解決済みの事案で〝内規〟があった。これはすでに廃止している。今回の新たに発覚した案件では、データの一部改ざんが見つかったが〝内規〟や〝リスト〟は確認していない。立花金属とダイヤメットは調査を継続している段階だが、現時点で〝リスト〟の存在は確認していない」

――前回(17年12月28日)の記者会見時に出てこなかった案件が、なぜこのタイミングで発覚したのか。

小野「(電線社などの問題を受けて)17年11月初めに、グループ会社を対象に書面調査を実施したほか、三菱マテリアルに臨時の〝品質コンプライアンスの内部通報窓口〟を設置した。当時はこれで十分な有効性があると判断した。しかしアルミ社が17年12月18・19日のJIS臨時監査で問題を指摘されたことを受けて、改めて三菱マテリアルによる特別監査を実施した結果、新たな問題が発覚した。ダイヤメット社は内部通報窓口への通報で発覚した」

――昨年11月の調査でアルミ社は対象に入っていなかったのか。

小野「アルミ社と立花金属の2社は直近に品質問題を発生させ、それを受けて策定した再発防止策を実施している最中だった。そのため書面調査などの対象外だった」

――ダイヤメット社は対象企業であったにもかかわらず、前回の調査ではわからなかった。虚偽回答をしたのか。

小野「出てこなかったのは非常に重要なポイントだと認識している。再発防止策を策定する上で、その点はヒアリングで押さえなければならない」

――昨年末までの調査と、2月から始める実地の臨時品質監査は具体的に何が違うのか。

小野「17年12月時点の調査はグループの製造・営業140拠点を対象(伸銅社、電線社、アルミ社、立花金属の4社はすでに発覚・再発防止策の実施中だったため対象外)とし、書面調査と内部通報窓口の設置を実施した。書面調査の内容は〝データ改ざんの有無〟や〝工程変更の際の承認を取っているか〟など具体的な設問を持った調査で、締め切りは10日後とした。一方で2月から始める実地の臨時品質監査は、製品の品質確認を優先するため対象を120拠点にした。複数のチームが現場で生データと検査成績書を突き合わせる作業をする」

――実地の臨時品質監査で、新たに問題が発覚する可能性はあるのか。

小野「調査結果による。これまでの特別監査の手法を臨時品質監査に持ち込むことで、膿は出し切ることができると思っている」

――全体として対応が遅い印象がある。なぜもっと早く踏み込んだ調査を実施しなかったのか。

竹内「その時々において適切な判断をしたつもり。現状をとても重く感じている」

――品質調査委員会を完全に外部に委ねる考えは。

竹内「さらに調査を行い、問題がないことを確認する。5人の特別調査委員会のうち3人は社外取締役や知見がある外部の方。これで独立性は担保できていると考えており、現時点で完全な第三者に委ねる考えはない」

――アルミ社の16年11月に発覚した案件について、〝内規〟は伸銅社などと同様に1990年代から存在していたのか。

浜地「当時よりも3年前からは確実にあった。しかし、いつからかはわからない」

――グループの不正品出荷先の数は何社になるのか。

小野「重複があるかもしれないが、(手元資料の合計では)748社」

――経団連が会員企業に対して実施した品質管理調査の結果に今回の事案が出ていないが、それはなぜか。

小野「現時点で私のところに調査要請の連絡が確認できていない。社内のミスコミュニケーションだったとすれば、大変申し訳ないということになる」

――竹内社長は責任問題についてどう考えているか。

竹内「2度とこういった事態が生じないようにガバナンス全般の拡充強化策を検討している。こうした取り組みを実行することが私の使命だと考えている。伸銅社以外の企業の人事は調査終了後しかるべき時期に対応したい。親会社である三菱マテリアルも同様だ」(遊佐 鉄平)

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