江の島に自動運転バス 県、五輪実用化へ実証実験

 次世代の公共交通機関として研究開発が進む自動運転バスが、観光地としては全国で初めて、藤沢市の江の島を走る見通しとなった。今秋行われるセーリング競技のワールドカップ(W杯)シリーズに合わせて県が行う実証実験で、江ノ電バスの既存路線の一部を活用。一般客を乗せ、対岸の国道134号と島内を結ぶ江の島大橋(全長324メートル)を自動運転で走行する。江の島が舞台となる2020年東京五輪での実用化を目指し、最新技術をPRする場にしたい考えだ。

 県が18年度当初予算案に関連事業費を計上。小田急電鉄(東京都)と連携し、9月のW杯大会期間中、江の島の玄関口である国道134号の交差点から島内に至る県道上を運行する。

 運転手が同乗するものの、ハンドルには手を添える程度とし、加速、減速も自動で行う予定だ。

 自動運転バスは、国が20年度までの実用化を打ち出しており、全国で実証実験が重ねられている。県内でも昨年、横浜市とディー・エヌ・エー(東京都)が金沢動物園(横浜市金沢区)で一般向けの試乗イベントを開催。公道でも昨年12月に東京都千代田区で自動運転バスが初めて走ったが、県産業振興課によると、県内の公道を走るのは初めてという。

 自動運転の技術レベルには、5段階の国際基準があり、今回想定しているのは運転者が同乗し、限定された状況下のみシステムが全ての運転タスクを実行する「レベル3」。県は20年度までにもう1段階進め、乗務員の同乗を必要としない「レベル4」での輸送の実現を掲げる。

 今回の実験で利用者から運賃を徴収することも検討しており、乗務員が同乗しない場合に課題となる料金収受についても合わせて検証を図る。

 県がロボット共生社会推進事業費として計上した2953万円には、自動運転バスのほか、JR辻堂駅周辺(藤沢市)をモデル空間と位置付けたプロジェクトも含まれる。商業施設や公園などで随時、ロボットの導入事例を公開。「見える化」を推し進め、世界最高峰のヨットレースが行われる湘南地域を、最先端技術の発信拠点として育てていく。

 同課は「ロボットが便利でこれから一緒に暮らしていくという意識を県民に伝えていきたい」としている。

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