海の再生見通せない 佐賀の漁業者、国に不信感

 佐賀県有明海漁協が、基金案受け入れ可否の結論を先送りした9日、漁業被害が深刻な西南部地区の漁業者は、受け入れても有明海再生につながるかは見通せないとして「約束事は何もない」と不安を隠さず、国への不信感をにじませた。先月末に受け入れ検討を提案した徳永重昭組合長も「(同地区は)判断できる状態ではない」とし、組合の結束を優先する考えを示した。

 国は昨年、開門せず基金案による和解を目指す方針を表明。同漁協は訴訟当事者ではないが、国が関連訴訟の和解協議で示した100億円の基金案に対し、沿岸4県の漁業団体で唯一、受け入れ反対の立場だった。

 26日結審予定の請求異議訴訟控訴審では、和解協議が再開されるとの見方が強い。関係者によると、農林水産省は同漁協の賛同を得れば、再開後の基金案での和解を後押しすると考え、九州農政局職員が各支所を頻繁に訪れるなど水面下で働き掛けを強めている。

 西南部地区5支所のうち、諫早湾に最も近い大浦支所の弥永達郎運営委員長は「諫早湾干拓の影響で20年間苦しんできた。国がちゃんとした約束をして判断できるのならいいが、国の都合で結論を求められても困る」と語った。

 同地区5支所の協議会会長を務める新有明支所の岩永強運営委員長は「組合を割るようなことをすれば組合全体に影響する」と話し、この日の会議では同地区の立場が重視されたという。受け入れ可否については26日以降、引き続き協議するとしている。

© 株式会社長崎新聞社